第二話 実力
夜、森に到着した。ブラッドは荷物の中からスナイパーライフルを取り出した。
「おいインガルス少尉。それは五年前にロールアウトした旧型じゃないか。そんな武器で戦えるのか?」
アダムス中尉の武器は最新式のようだ。
「いつの時代でも、武器で強さが決まるとは限らない。使い慣れた武器の方が俺にはよく馴染むが、お前はそういう感情は無いのかい?」
「そういうわけじゃねえよ。足手まといになるかどうか心配なだけだ」
「ほほう。でもアダムス少佐は作戦に困っていて俺を招集した。足手まといなのは中尉、お前の方じゃないのか?」
アダムス中尉はちょっと怒り、
「うるせえな! 関係ねえだろ兄貴のことは!」
この部隊の隊長らしいが、正直言ってアダムス中尉の力はあてにできそうにないな。ブラッドはそう思った。
「ふんふんふん」
グラディーがパソコンを開く。他の機械のスイッチを入れる。
「お前はお前で、武器は無いのか?」
「あ、俺? 俺はブラッドのサポート専門だよ。一応リボルバーは一丁だけ持ってるけど?」
「そうか…。じゃあそっちの女は?」
「私はブラッドの弟子みたいなものよ。でもちゃんと実績もあるわ」
アダムス中尉もブラッドたちをあてにしてなさそうである。
「では現状を聞こう。戦場はどうなっている?」
部隊の隊員が地図を広げる。
「昨晩ここで戦闘をしました。敵軍は四割ほど倒しました。対してこちらは負傷者こそいるものの戦死者はゼロ」
「なら今攻めるのか?」
「しかしあの要塞にどのくらいの兵力が残っているのかわからないのです」
ブラッドは顔を上げた。
「攻撃機の類が飛んでいないが。それは? 制空権はまだなのか?」
「空軍基地はここからだと遠すぎます」
「では俺たちでどうにかしなければいかんな」
隊員はため息を吐くように言った。
「そうなんです…」
幸いこの部隊の戦車は全車戦闘ができる状態だった。
「戦車で攻め込むのはしたか?」
隊員は地図のある一点を指さし、
「ここがぬかるんでいて、戦車での進軍は不可能です」
「では歩兵で攻めるのか。まいったな。俺はそういうの苦手なんでね…」
そう言った直後にグラディーが叫ぶ。
「敵が接近中!」
アダムス中尉がそれに疑問を投げる。
「どうしてわかる?」
グラディーはアダムス中尉にパソコンの画面を見せる。
「今進軍してるでしょう。五人来てる。偵察部隊かも」
「おいこの画面どこで撮ってるんだ?」
グラディーの持つパソコンには進軍してくる敵軍が映されている。
「無人偵察機だよ」
「空軍がよこしたのか?」
「俺の自作のドローンだよ。敵の上空を音も出さずに今飛んでる。バッテリーは二十四時間持つ」
「そんなものをお前が自作?」
アダムス中尉は少し混乱しているようだ。
「中尉、命令を。どうしますか?」
我に返ったアダムス中尉は、
「五人だけなんだろ? 迎え撃て」
「待て」
ブラッドがそれを止めた。
「何だインガルス少尉? 何か文句でもあんのか?」
「俺とエールが迎撃に出る。木に登って狙撃する」
ブラッドはエール、グラディーと共に歩き出そうとした。
「おいインガルス少尉! 勝手に動くな!」
「せっかくひっそりとここに着いたのに盛大に反撃に出ては、居場所がバレるだけだ。静かに狙撃すればその心配はない」
と言って中尉の注意を無視した。
木に登る。
「敵の方向はどっちだグラディー?」
「六時の方向だね。固まっている」
「よしわかった。エール。撃つぞ」
二人がライフルを構えた。スコープに熱源探知機を付ける。これなら暗い夜でも敵がはっきりわかる。
「見えた」
「撃て!」
最初にエールが撃った。弾丸は敵兵の頭に命中した。
「腕を上げたな。では今度は俺が」
ブラッドも敵兵を狙撃する。
突然の攻撃に慌てふためく敵兵。ブラッドたちにとってそれはただの的である。一分もしないうちに五人とも倒した。
木から降りる。
「勝手に動きやがって。俺の命令を無視するな!」
中尉は怒っている。だが、
「今のお蔭で部隊に被害が出なかったぞ。そう考えれば俺の行動は酷評できまい」
と言う。
「おのれ…」
中尉は黙った。
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