第一話 最前線へ

「あとどのくらいだ?」

「もうすぐだよ。ほら空港が見える」

 窓の外に目を向ける。味方の軍事基地が見える。

「早く地上に降りたいわ。耳が痛くてたまらない」

 やがて軍用機は着陸した。他の部隊に紛れて三人の若者が降りる。それを出迎える兵隊。

「こちらです。荷物をお持ちしましょう」

「いやいい。これは俺のだ。俺が運ぶ」

 軍のテントに招待される。

「あなたがクリス・アダムス少佐ですか?」

「そうだ。よく来てくれた、ブラッド・アルマンゾ・インガルス少尉。後ろの二人は?」

「ああこいつらですか。俺の連れですよ。いないと困るので」

 ブラッドは後ろの二人に自己紹介させた。

「私はエール・フィリップス」

「俺はグラディー。エールの双子の兄です」

 アダムス少佐は自分たちを心地良く受け入れてくれた。

「早速だが、出向いてくれるかい? 我が軍の作戦は遅れ気味でね」

 作戦の内容は事前に把握している。自分がどう動くかも頭に叩き込んである。

「…というわけだ。今敵の基地は力が弱まっている。そこに兵士を動員されるのは何としても阻止したい」

「なら森のこのポイントで待機させてもらいますよ。茂みの多い森の方が身を隠して狙撃しやすい」

「わかった。デトロイトの死に神と呼ばれるその力、存分に発揮したまえ」

 作戦会議が終わるとすぐに移動だ。アダムス少佐の部下の部隊と共に車に乗った。

「さっき聞いたぜ。デトロイトの死に神? そんな面白いニックネームつけてんのかよ? お笑いだな!」

「誰だお前は?」

「俺はトム・アダムス中尉。この部隊の隊長だ。言っておくが部隊では俺が上官だぞ」

「あいにくだが俺は招待されたお客様なんでね。部隊の隊長だか何だか知らないが命令しないでもらいたい。俺もアダムス少佐の命を直々に受けているんだぞ」

「ちっ。面白くねえな」

 そんな会話をしながら現地へ向かう。


 一週間前に電話がかかって来た。

「出動命令が俺に? 今は休暇中なんだが」

 任務の電話である。だがブラッドは事前に休暇を申請し、家で猟犬の訓練をしている最中だった。

「そこを何とかできないかい? 君の力が必要だ」

 アダムス少佐は引きそうにない。長ったらしく交渉するのは面倒だ。

「…仕方ありませんね、じゃあ。準備するので時間を少し下さい」

「ありがとう。君を待っているぞ」

 電話が切れた。

「上司?」

 ブラッドの家に住んでいるエイミーがそう聞いた。

「いやオブライエン大佐じゃない。大佐は休日出勤させるような人じゃないからな。違う部隊から俺に出動要請が出ている」

「じゃあ、行くの?」

 エイミーが心配そうな目で見る。

「なあにどうせぬるい任務さ。猟犬の訓練の方が難しいだろう。犬たちの世話、任せたぞ」

「わかったわ」

 エイミーと話を付けると今度は地下室に降りる。

「エール、グラディー。任務だ。準備しろ」

「うっそー。今休暇じゃないの?」

 エールが反発する。

「どうしても来いって言われてね。そのかわり報酬ははずむぞ」

「俺は行くよ。新しい機械の動作確認を実戦でテストしたい」

 グラディーは行く気満々だ。

「どうするエール? お前はお留守番か?」

 こう言うと必ず言われる。

「行くわよ!」

 三人は準備し、現地に飛んだ。

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