第六話 行ってみる

 それから一週間経っても恵理乃たちは下の階に行くことを許されなかった。

「…絶対何かあるわ。そじゃなきゃ何で同行しちゃいかんの?」

 周りの人たちは自分と同じ疑問を抱いている。

 大河が教授の宿泊している部屋から帰って来た。

「返事はどうだった?」

 大河は首を横に振る。

「…発掘のアルバイトを募集したのは教授なのに。何でなんだ?」

 悟は今度は烈成に聞いた。

「先輩の方から教授に許可を貰ってみてはどうです?」

「俺が? きっと駄目だぜ。元々俺なんて行きたい研究室に入れなくて岩本教授の研究室を選んだんだ。あまり仲良くないんだよ。それに俺はもうあの遺跡には関わりたくないね。絶対にねつ造だよあれは」

 烈成を通して許可を得ることは無理だ。

「恵理乃。真央先輩には聞いた?」

「何回聞いても何も教えてくれない。全部誤魔化される」

 大河が烈成に聞いた。

「先輩は何で帰らないんですか? 教授と喧嘩したんでしょう?」

「このバイトにお前たちを誘ったのは俺だ。だから全員が無事に帰ることができるか見届けないと。だから帰らない。逆にお前たちが帰るのなら俺は喜んで付いて行くぞ」

 まだ帰るわけにはいかない。遺跡について、教授について、謎が多すぎる。解決しないとスッキリしない。

「今日の夜。教授に黙って行ってみないか? 行ってみれば全部解決する。どうだ?」

「私しゃ賛成ね。行くわ」

 祥子と大河も賛同した。

「お前たちだけで行くのか? それは危険だ。俺も行く」

「もう遺跡に関わりたくないんじゃ?」

「お前たちの安全の確保が俺のすべきことだ。それにねつ造の証拠を押さえておきたい」

「決まりね。教授と真央さんには黙ってましょ」


 真央には肝試しに行くと言った。連日の遺跡発掘で疲れているから息抜きしたいからと伝えたら、教授からも外出の許可が出た。

「まあ真っ暗」

 空には雲一つない。だから星がよく見える。まるでプラネタリウムだ。

「あれ何座かな?」

「天文学には興味ないね。いいから早く行こう」

 五人は最初だけ遺跡とは逆の方向に向かって歩き出した。万が一見張られていたら困るからだ。そして誰も見ていないことを確認すると反転し、遺跡に向かった。

「気を付けろ。土地勘のない場所なんだ、迷子になったら終わりだぞ」

 道を確かめながらゆっくりと歩く。目印も何もない道。本来なら数分で着くのに、数十分かかって到着した。

「先輩。先頭頼めますか?」

「俺が先に行くのか? 俺は奥の下の階どころか上の階にすら行ってないんだぞ?」

「この中の誰かが教授か真央先輩とつながっていたら、ねつ造の証拠が消されてしまいますよ?」

「それもそうだな。わかった。行こう」

 梯子を下りて地下に行く。そしてそのまま直進し、門をくぐって城の中に入る。階段のところまで一本道だ。

「ここか」

「上はもう何度も行きました。あらかた発掘しましたよ。古代人は現代よりも高度な文明を持っていたということがわかりますよ」

「ちょっとだけ見てくる」

 数分待った。そうしたら先輩が帰って来た。

「…にわかには信じがたいが…。お前たちの言っていることは正しいのかもしれないな」

 烈成もねつ造ではないことを認めざるを得なかったようだ。

「下行きましょ。早く帰らないと怪しまれる」

 五人で下の階に行く。階段は下の階の方が丈夫な感じがする。

 少し歩くと広間に着いた。

「上の階では首長竜の研究をしていたんだ。下の階はもっと高度な研究をしていたのかもしれないな」

 悟が言う。可能性のある話。誰も否定しない。

「あ! これは!」

 大河が反応した。

「どしたの?」

「これは俺が棺桶の中から見つけた鍵だ!」

 鍵は扉の鍵穴に突き刺さっている。

「問題なのはこれから先か…」

 扉を開け、部屋に入る。

「な、何だこれは!」

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