第06話 ここにあった日常



今日は、先輩と放課後に会う約束がある。


会って何を話せばいいのかわからない。昨日の初恋の彼女の件も手伝い、頭の中はぐちゃぐちゃで、先輩のことについて、きちんと話ができるのか不安で不安でしょうがない。

それでも、先輩が今後どうするかで僕の行動理念は変わるはず。とりあえずは、話を聞いて行動しようと。


放課後、以前来ていたように屋上へと向かう。少ししか離れていないけれど、なぜか懐かしい。それだけ思い入れのある場所になってしまったのだろう。


「先輩」僕は呼びかける。先に来ていた先輩は、呼びかけの声で僕に気づき「こんにちは」と挨拶を返す。


「ご用件は何でしょう。」


僕は即座に話をすすめることにした。なぜなら何を話していいのかわからなかったから。


「せっかちね、まあいいわ。聞きたいことの一番はこれ、私のこと嫌いになった?」


少し怯えたような表情で僕に尋ねた。


「いえ、嫌いになったりしてませんよ。嫌いになったり出来ませんから。」


「よかった・・・ならなぜここに来なくなったの?」


先輩はいつもの微笑みで僕に再度問う。


「ん、あまり言いたくなかったのですが、仕方ありません。先輩が誰かと付き合うと思ってましたから。告白されたのを見ましたので。断りもせず、返事を待たせるということは、先輩も付き合う気があったんだろうと・・・まあ、僕の勝手な憶測でしたが。とりあえず、僕は付き合う相手がいる人には近づきたくありません。なので、しばらく離れてしまおうと考えてしまいました。そういう理由です。」


僕は先輩に頭に浮かんだ思うことを一気に伝えた。


「そういうことだったの・・・」


先輩は少し寂しそうな表情で相槌を打った。


「はっきり言っておくわ。付き合うつもりはまったくないわよ。告白してきた相手は私の幼馴染。ただ、やはり幼馴染なので、付き合うつもりがなくても無下に断るのに少しためらいがあったのは事実。ただ。わかってほしいのは、付き合うつもりで返事を延ばしたんじゃないってこと。それにもうちゃんと断ったわ。」


先輩は心配そうに上目遣いに僕を見た。


「わかりました。そういうことならまた屋上にくるのは問題ありません。ですが、なにも連絡せず、身勝手に来なくなった僕がまたここに来て、先輩と日常を過ごしてもいいものでしょうか?」


僕は、僕の身勝手さで来なくなったわけだから、今までのように先輩と過ごしてもよいのか、その不安をしっかりと伝えることにした。


「全然問題ないわ、というより来てほしい。もう私の日常の一部になっているのだから。ねっ。」


「確かに僕も日常の一部になってましたので、寂しかったですよ。」


僕も微笑んで先輩にそう返す。


「それは嬉しいことだわ。」


先輩は顔を赤くしながら微笑んでこう言った。





僕は先輩に呼びかけた。


「先輩に話しておきたいことがあります。」


今日のようなことが、またないとはいえない。だから、やはり話しておかなければいけないと僕は心に決めた。



そう、たとえ、たとえ嫌われようとも。

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