それでも世界はうつくしい。

 純粋だ、と言われることがある。

 世のなかの裏を知らない、と言われることもある。


 小説を書くには、もっと世のなかの裏というものを知ったほうがいいんじゃない? と言われたことも、一度や二度ではない。


 私はおそらく、きれいな世界に住んでいる。私の世界の空は青く、星はきらめいているのだ。

 社会というものが、よくわかっていない。

 私はまるで十四歳みたいだ。


 それでいい、と思う。


 私に才能というものがあるとしたら、その一点に尽きると思うのだ。

 世界をきれいだと思える才能。

 それはあるいは、思い込み、かもしれないけれど、でも、それでも。

 世界は、きれいだ。


 そこまで甘っちょろい人生を送ってきた気はない。

 汚いことだって、それなりにふれてきた。

 それでも、やっぱり。


 世界は、うつくしい。


 そう言い切れることを、私は幸福に思う。


 だって、だからこそ私は、小説というものが書けるのだから。

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