3.突入 より

【作戦関係用語】


○CQB(Close Quarters Battle):(特に屋内の)近接戦闘。武器の取り回しの速さが有利に繋がりやすい。このため、威力や射程より対応速度を重視した装備が好まれる。

 定石は攻撃目標の隙を衝き、あるいは注意を逸らした上で突入・制圧すること。なので攻撃目標に悟られないよう接近し、可能ならそのまま突入・制圧するのが理想的。



【放送局の構造】


○概要:対テロ(クーデタ)対策を考慮し、内部構造は故意に複雑なものとしてある。また建造物構成の都合上、重いスタジオは下層、軽いオフィスは上層へ配置している。

 ・主調整室:放送局の最重要設備。ここでは放送波に乗せる情報を選び、またある程度の編集を加えることもある。

 ・スタジオ:重量配分も考慮し、放送局の低層階に配置される。特に観客を招き入れる公開スタジオは、警備や守秘の意味合いもあり入り口近くに配置することが多い。

 ・オフィス:放送局の上層階に配置される。事務仕事に限らず秘匿すべき情報も扱うため、外部の眼に触れにくい位置取り。取材して得た素材もここに集まる。

 ・顔出しブース:報道局などが鮮度の高い情報をオフィスから発信するための小規模ブース。



【主な装備】


○マスタ・キィ:「ドア開けの散弾銃(ライアット・ガン)」を示す隠語。正確には、鍵本体と蝶番を破壊する。作中のM4A1がオプション装備として銃身下に装着するM26 MASSもその一つ。

 弾種はスラグ弾(※)を用い、ほぼ零距離で目標へ撃ち込む。


 ※ スラグ弾:一粒弾とも。散弾の代わりにひと塊の弾丸を撃ち出す。口径が大きい分、大質量(大威力)の弾丸を撃ち出せるが、一般に空気抵抗が大きく射程は短い。



【解説】


○本作の特殊作戦グループ(分隊)が発光体を装備しない理由

 本作に登場する特殊作戦グループ(分隊)において、「敵に気付かれる前に仕留める」のが近接戦闘(CQB)の基礎となる考え方。ライトは洩れた光で異常を察知される危険をはらむ。(ゆえに暗視装置(※)を装備)。

 同様にレーザ・サイト(※)も、照射部が周囲から目視できるために危険なしとは言えない。本作戦では夜間の暗がりに紛れるので、レーザ・サイトも危険と判断している。

 ※ レーザ・サイト:銃身に取り付けるレーザ・ポインタ。使用者からは狙点をレーザが照射して見えるため(正確には、狙点からレーザ・サイトの取付部まで、わずかに外れた部分)、狙いを特定しやすい。

 ※ 暗視装置:作中で使用するのはAN/PSQ-20、微光暗視(スターライト・スコープ)と熱線映像(サーマル・イメージャ)の複合装備。単眼鏡で、ヘルメットに固定して使用する。



○狙撃銃にレーザ・サイトを装備しない理由

 弾丸は直進しないため。これは質量と空気抵抗を考慮すれば明らかで、弾丸は徐々に減速し、気流の影響でブレ、また重力に引かれて落下もする。

 対してレーザはどこまでも直進するので、距離を経るにつれレーザ光跡と弾道の乖離は大きくなる。ゆえに接近戦ならともかく、長距離射撃にはレーザ・サイトは実用的ではない。



○近接戦闘の装甲

 ・ボディ・アーマの考え方:破片よけ。ライフルの銃弾を受け止めるボディ・アーマもなくはないが、命中時の衝撃が馬鹿にならない(そこで動きが鈍ると、とどめを刺される恐れもある)。さらに防御性能を追求するほど重量がかさむため、装着者自身の運動性が損なわれる(=敵弾に当たりやすくなる)。

 落としどころとしては、「最小限の防御で、敵弾に当たらないよう動き回る」こと。詰まるところ「当たらなければ、どうということはない」ということになる。

 この場合〝最小限の防御〟とは、「予期せぬダメージを受けない程度の防御」を指す。近接戦闘においては破片のダメージが無視できないが、この破片の軌道は予測しづらい(=避けにくい)。このため、本作戦で特殊部隊が装着する装甲の役目としては「破片よけ」を目指している。

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