第4話予想外


 スズメは、雷神様が微笑んでくださったのがわかりましたので、心のうちにあることを、この事ならば決して失礼には当たらないだろうと思うことを雷神様に申し上げることにしました。


「何度もあなた様の作られたものを拝見させていただいております。大きく横に走るもの、木の根のように枝分かれしたもの、ほとんどまっすぐに降ろされたもの、どれもが一瞬で、もっと長く見たいとは思いますが、でもその一瞬を見るために、私はこの翼を使っております。よく見える場所にすぐさま飛び移ることができて、スズメに生まれて本当に良かったと思います」


それをお聞きになって、雷神様の表情は少し変わられたのですが、スズメにはよく見えませんでした。また相手は神様ですから、そのお顔をまじまじと見るのも良くはないだろう思ったからです。


 実は雷神様はこと「稲妻の形」については、こだわったことがなかったのです。大きさはご随意ですが、雷を落とす場所なども雨風と一緒になってしまうので、ご自身でもどうしようもないことでした。

しかし晴天ならば別です。知らせる神様を戒められたように「寸分違わぬ霹靂」を他の国々の神同様、操ることがお出来になります。


稲妻こそが雷であるように、他の神様たちもお思いに、また生き物たちも考えてはいます。ですが雷神様ご本人にとっては「自分の力ではどうにもならぬもの」よりは、いつも身に付け鳴らしている太鼓の方に愛着を持たれ、その音の事を気にかけておられるのです。

ご自身を人間の姿に変えられ、太鼓の名手の演奏を側でお聞きになったりもされています。


スズメは、そんなことは知る由もないので、どうしても言いたかった事を雷神様に申し上げました。


「特に今日の雷は素晴らしいものです。いつもとは違って見えます。

例えるならば何と申し上げたらよろしいのでしょうか、生まれたばかりの清らかさというのでしょうか、私共が雛から初めて大人の羽にすべて変わった時の様です、失礼かもしれませんが」


と、とても熱を帯びてスズメは雷神様の方を見ましたが、当の雷神様は自分の例えが気に入らないという風ではなく、すこしぽかんと驚かれたご様子でした。そしてしばらくして


「ハハハハハ、そうか! 生まれたてのような美しさがあるか、そうか、そうか! ハハハハハ」

お笑いになられたので、スズメは不思議に思いました。


「雀よ、実は今日の太鼓は真新しいのだ、初めて使うのだ」


「ああ、そうなのですか、それで生まれたてのように美しいのですね」


「しかしな、私はあまり良い音ではないと思うのだ、お前はそうは思わぬか? 」とお尋ねになりました。


困ったのはスズメの方です。雷の姿は好きなのですが音を気にかけたことはなかったからです。何と申し上げてよいか戸惑っておりますのを、雷神様は少し見物するようにご覧になっておられました。またご自身も、自分の記憶の中のスズメにかかわることを思い出そうとしておいででした。

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