第3話副産物
雷神様はスズメを見れば見るほど、かわいそうだとお思いになられました。全身もうこれ以上濡れることはないだろうと思うほどに、羽は体にぴったりとくっついています。しかしブルブルと体を震わすと、案外多くの水が飛び散って、またそこに平然と止まっています。
「虫を落とすためか? 飛べぬわけではなさそうだが」
トビたちがずぶ濡れになって寄生虫を落としているのは、何度か雷神様はご覧になったことはありましたが、でもこの風では彼らもどこかに隠れてしまっています。雷は自分が鳴らしておられませんが、風雨の強いことは変わっていません。雷神様はすぐそばまでやってきましたが、スズメは頭から落ちてくる雫のため目が大きくは開けられないようで、雷神様のことに気が付きませんでした。
「雀よ、お前はどうしてこの雨の中ここにいるのだ」
突然の事です。スズメが驚かぬはずはありません、
閉じていた嘴は自然にあき、目は雨にも関わらず大きく見開かれました。動くこともできず、じっとこちらを見ています。
それもそのはずでしょう、こんな大きなものをスズメは見たことがありませんでした、目の前に大木が急に生えたようで、しかもそれは宙に浮いています。多くの太鼓と怖いような姿を「見たことがある」という話は他の鳥から聞いたことはありました。
「雷神様でいらっしゃいますか? 」
意外にしっかりとしたその声は、ほとんどのものが自分を近くで見た時の「恐れ」以上のものがあると雷神様にはわかりました。
「そうだ、お前は何故ここにいるのだ? 羽を痛めておるのか? 」
「いえ・・・違います。稲光が美しいのでここで見ております。私はあなた様の雷のさまがとても好きなので・・・」
雷神様はふっと笑われました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます