第2話試し
風神様はそのご容姿とは全く違い、考え深く、本当にお心映えも優れた神様らしい方です。ですからその眷属であられる
「人のことから神様のことまでを知らせる風様」から雷神様のご様子を知らされずとも、
「太鼓のために一仕事をした方がよさそうだ」
とお考えでいらっしゃいました。自分の所にやって来た「知らせる風様」を、ふっと一息吹かれて、あっという間に雷神様の所に向かわせました。もちろん仕事のことを伝えるためですが、知らせる風様にとってはあまり楽しいことではありませんでした。
もう何百年も、いやもっと昔になりますが、風神様の破れた袋からたまたま生まれた「知らせる風様」はとても元気が良く、目端の効く方でした。そうして神と人間の様々な事を知るにしたがって、そこに「理」が存在するではと気が付き、徐々に
「知恵者の風」を吹かしだしました。風神様はご存じでいらっしゃいましたが、度が過ぎるようであれば、いずれは自分が激しく叱責をしようと思っておられました。
「私がやった方がよかろう、言葉で言っても聞かぬだろう。ああいう奴は口が達者で、反省というものをしない。風殿は心がお優しいから逆にやり込められるかもしれない」
と雷神様は遠く離れた所にいらっしゃる風神様に声をかけられた直後、晴れた空から数度にわたり稲光が地面に落としました。
「くわばら、くわばら・・・・・」
と人間たちは青空の下、地面にしゃがみこみ祈っているようでしたが、真に恐怖に思ったのは彼らではなかったのです。知らせる風様はその場立ち止まっていたので無事でしたが、もし後ほんの少しでも動いていれば、どれかの雷(いかずち)に当たって消滅していたのです。
賢い方ですから、これが何を意味するのかはよく分かっておられました。そのあとすぐに風神様の所に、今までの事を謝りに行かれたのです。
「そうか・・・風神殿の言葉に甘えよう」
「わかりました、そうお伝えしておきます、雷神様」
丁寧に頭を下げて知らせる神はその場を去りました。そうして雷神様は思ったのです。
「まだ、あ奴は真にわかっておらぬし、反省もしておらぬようだが、私が釘を刺しておかぬと面倒なことになるから」
心は晴れていませんでしたが、大きくて高さのある白い雲と、厚い灰色の雲が到着し、雷神様は仕事を始めました。
「まあ、思ったほど悪くはないか・・・」
何度か太鼓を大きく打ち鳴らしてみましたが、鳴らすほどに音は良くなっているようでしたので、雷神様は少し気分が良くなられました。そうして久々に下界を覗き込んでみると、風と大粒の雨で、街中も山も生き物の姿は消えていました。時折目に入る動くものも、自分の放つ雷におびえ、すぐさまどこかに隠れてしまいます。
しかし、ふと雷様は電線の上に何か生き物がいるのに気が付きました。ずぶぬれで、時々風で飛ばされながらもまた同じところに帰ってくるのです。
「スズメか?」
しかもどこか楽し気にしているので、試しに近くに雷を落としてみますと、もちろん雀に当たらぬようにですが、一層喜んでいます。
「何故笑っているのだろう」
お仕事中ではありましたが、理由を聞きたいと降りることになさいました。
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