胸が痛いのは貧乳より巨乳のほうがダメージでかい

第8話

ここの交差点からはね

月が綺麗に見えるんだ。

ほら、なんとかムーンっていうじゃない？

あの時とか本当に綺麗なんだよ。

また月の綺麗な日においで。

終電を逃し、捕まえたタクシー。

ミラー越しに運転手さんが穏やかに呟いた。

今

交差点に立つ。

月は、見えない。

月が綺麗に見えるってことはね

ちゃんと月を見ていた。

だから、わかるんだよ。

見えるんだよ。

私はちゃんと彼を見ていただろうか。

月が夜空を照らすことなんて当たり前だと

ずっと下を向いて歩いてなかっただろうか。

失った途端に

当たり前の日常が崩れた瞬間に気付くなんて

…どうかしてるぜ！

もし〜ならば

〜してれば、〜していなければ

後の祭り。

覆水盆に返らず。

後悔先に立たず。

…思念の無限ループ。

breakする条件ってなんだったっけ？

会いたい思いだけが膨れ

胸はしぼんでいく。

それでも変わらず月は夜を照らす。

至らぬ私に

こんなにも世界は優しい。

納期を除いて。