第26話 サンタからのプレゼントは?
クリスマスパーティーは、あんなことがあった後とは思えないくらい盛り上がった。
功太は菜月に猛烈にアピールし、いいようにあしらわれていたし、武田は未来と馬鹿話しをしては周りを笑わせていた。
功太が武田兄妹を送りながら帰り、菜月と梓は飲み過ぎたため泊まることになった。
居間を片付け、菜月と梓のための布団を居間の隣りの部屋に敷く。菜月は功太とワインの飲み比べをしていたせいか、すでに畳でつぶれていた。
「未来ちゃん偉いですね。あたしなら遊んだ後に勉強なんかする気にねらないです」
「そうだな。オレも明日でいいかって、結局やらないタイプだな」
梓と二人で布団の上に菜月を移動させる。
「まだ少し付き合わないか?」
「はい」
それなりに飲んではいたが、今日の出来事があったせいか、まだ飲み足りないような気分だった。
テレビをつけて、見やすいように隣り合って座った。
「あ、半田さん、ポケットから何か落ちましたよ」
紗由理が持ってきた封筒だった。
「ああ……」
オレは封筒から中身を出して座卓に広げた。
「これって……」
「さっきね、未来の父親の奥さんが持ってきたんだけど……。それがね、前に話した前カノの話し覚える? 」
「はい」
「その奥さんてのが、彼女だったんだ」
「えっ? 」
「しかも、よりを戻したいみたいなこと言われてさ」
「なっ?! 」
梓は口をパクパクさせ、声もでないようだった。
「……彼女に再開できて良かったよ」
「……??? 」
「あんな女のせいで恋愛できなくなってたなんて、本当に馬鹿らしい。それがわかったから、再開できて良かったんだ」
「えーと? 」
オレは残っていたワインを湯飲みに入れ、いっきに飲み干した。
「なんであんな女に惚れてたんだか……。今だったらあり得ないし、あんな相手は選ばないだろうな。あれが女性全般みたいに思って、馬鹿みたいだ」
「つまり半田さんは、恋愛に前向きになれそうってことですか? 」
「もう遅いかな? オレみたいなオッサンじゃ、相手も見つかるかわからないけどな」
「半田さんはオッサンじゃないです!! 」
あまりに近い距離で、梓はオレの手をしっかり握った。
「アハハ、ありがとう。山本さんも未来も、オレのことオッサン扱いしないから、なんか気分だけでも若くなれるな」
「本当に半田さんはオジサンじゃありません! とても魅力的な男性だと……思います」
赤くなりうつむいてしまう梓の肩を思わず抱き締めたくなり、オレは最大限の理性を手繰り寄せる。
「ありがとうな。でも山本さん、気を付けた方がいいよ。誉めてもらえるのは嬉しいけど、勘違いしそうになっちゃうから。ほら、オレ今まで恋愛枯れまくってたじゃん」
「勘違い……ですか? 」
「そう。こんなオジサンでも、山本さんみたいに若くて可愛い娘に好かれてるかもって。アハハ、ないのはわかってるけどさ」
梓は、ジッとオレの顔を見つめた。
いや、だから、そういうのが勘違いをね……。
「勘違いじゃありません」
「は? 」
未来は、真っ赤になった顔で、それでもしっかりオレから視線を外すことなく、オレの片手を再度握ると、自分の胸の前に持ってきた。
そして、そっと目をつぶる。
これって、サンタクロースからのプレゼントか?!
このシチュエーションは、オレの勘違いなんかじゃないよな?
オレはごくりと唾を飲み込む。
そして、つかまれていない片手で梓の肩を抱き寄せる。梓は拒否することなく、目を閉じたままだ。
「山本さん? 」
「名前で呼んで下さい」
「あ……梓さん」
ゆっくり顔を近づけていき、吐息がわかるくらいの距離になった時、襖がガラリと開いた。
「弦さん! 」
オレは横っ飛びに梓から離れ、梓も慌ててソッポを向いた。
「今、何かしてなかった? 」
「してない、してない! 飲んでただけ」
「そう! そうよ、未来ちゃん」
未来は疑わしそうに居間に入ってくると、オレの腕にしがみついた。
「梓さんでも、弦さんはあげないんだから! 」
「はい? 」
「あたしが16になったら、弦さんのお嫁さんになるんだから。それで、おじいちゃんになってもばっちり介護してあげるの」
「半田さん、まさか未来ちゃんに……」
「いやいやいやいや! まさかそんな! 未来は娘みたいなもんで……」
オレは未来にがっしりつかまれた手をブンブンと振る。
「キスしたもん! 」
「半田さん?! 」
「何を馬鹿な?! 」
右側には未来、左側には梓に挟まれ、幸せ……とはほど遠い状況になる。
恋愛を諦めた枯れっ枯れのオレに、いきなりやってきたモテ期?!
嬉しい……嬉しいんだが、誰か助けてくれ~!!
恋愛を諦めたギリギリアラサーオヤジVS恋愛に夢を抱かない15歳女子 由友ひろ @hta228
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