第4話 懺悔と説法と悟りと

いろんな意味で怒涛の出張が終わり、代休を取った翌日、部屋のベッドでぐったりしつつ、やはり彼の記憶が離れない。


手の大きさや感触、部屋で私を見下ろしてた笑っていない目、電車で触れた胸板と腕。


しかも今朝から引き続きLINEが来ていて、内容は仕事とは全く関係ない。ちょっと遊ばれている感じを匂わせるものなのに、それを承知でちょっと楽しいと思ってしまっている自分!浮気だろ!


翌日、耐えきれなくなって、仲のいい同僚に「更衣室集合」をかけた。人前で話せないことは、常にここで話す。


しかも彼女は彼の同期で、よく食事や休日にもほかの同期含めて遊びに行ってるくらい仲がいいから、絶対適切なアドバイスをくれるはず!


招集をかけた瞬間、彼女は楽しみで笑いを堪え切れない様子で、私とニヤニヤしながら廊下へ出た。


ドアを開け、中に入るなり、彼女は、


「もしや、やつのこと?」


と笑いながら聞いた。


「そう。ほんと事件!この出張中、手は繋がれるわ、部屋で別に迫られたわけじゃないけど至近距離になるわ、帰りの電車でも手を触られたり、引っ張られたり、よく分からない気障な言葉を言われるわ・・・絶対遊びだって分かるのに、混乱というか、どうしよう!ってなった。」


私の暴露を一通り聴き終わる前に、話が進むにつれて彼女の目が見開かれてゆき、最終的にとんでもない言葉が彼女の口から飛び出した。


「私もなの!」


・・・はい?


「私も3ヶ月前、彼氏とあまりうまくいってなくて、遊んでもいいやっていう気持ちがあったのは否めないんだけど、泊まりで同期旅行に行った時キスされて、後日の飲み会帰りでも駅でキスされたの!向こうは付き合いたいみたいなこと言ってたけど、さすがに私はそんな気ないから断ってて。」


「しかもこの4〜5日間もLINEで、私のことがまだ好きだとか、私も2人が一緒に出張に行ってたのは知ってるから、出張の話とかしてたんだけど、『私のこと好きって言うけど、今日から女子と出張でいいじゃない。』ってわざとらしく言ったら、『俺は一筋だから、誘惑されても折れませんよ!』って返事が来たの。だけどさ、誘惑してんのどっちw」


私は最初ぽかーんとしながら話を聞いていたが、途中からおかしくなってしまい、笑ってしまった。


「つまり私達、2人とも遊ばれてたってことだよね?」


私がそう呟くと、彼女も頷いた。


「なんかさ、頭では分かってるんだよね。しかも真面目にあいつと付き合うことってないと思ってたけど、この一件で改めて思った〜。でも!何故か知らないけど、いいなって思うんだよね。」


「多分、私達お互いの彼氏と長いから、ああいう紳士的な扱いとか、ちょっと甘い言葉とかにふらっとしてる気がする。」


私はなんだか気が抜けて、今までの迷いが吹き飛んだ。


まだまだ話し足りない私たちは、仕事終わりに近くのカフェに行くと、今までの経緯を話し、LINEを見せ合い、とにかく笑った。ドキドキしていた自分がアホみたい。


しかし!これから本格的な懺悔が始まる・・・出張終わりに彼氏に会った際、私が上の空だったり、気乗りしない風だったのを絶対感じている。


私は意を決して、彼氏に今夜会いたいと連絡した。すぐに返事があり、その文面は私を恐々とさせた。


『俺も話したいことがある。』


ああ、手遅れかもしれない!仏の顔も三度は嘘かもしれない!

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