5日目 こんなの知らない⑤

 私が彼の話を聞いて思ったことは、私なんかよりもよほど彼が苦労してきたということだった。そんな人にぶって先程までの相談をしていた自分が恥ずかしくなった。私の悩みなんて、彼に比べれば全然・・・・・・。そう思うと今すぐ逃げ出したくなったけれど、なんとか言葉を絞り出す。


「・・・・・・苦労してきたんだね」


「まあね」


 会話はそこで途切れてしまい、また沈黙が漂っていた。


「ねえ、青椿さんの好きな人って白峰さんだよね」


 彼の眼差しは、確信を得ているように力強く、目を合わせると全てを見透かされてしまいそうだった。


「そう、だけど・・・・・・?」


 誤魔化したところで何にもならないと思い、そう返した次の瞬間。彼の口から予想だにしない言葉が放たれた。

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