5日目 こんなの知らない③

 榎嶋くん。フルネームは榎嶋えのしま陽風はるか。サッカー部所属で身長が高く、勉強もそつなくこなす。それを鼻にかけず、女子には優しく、男子には気さくに話しかけるコミュニケーション能力も持ち合わせており、一部界隈では“紳士”と称されている。こんな人と私のような日陰女が仲良くしていると知られたら、学校の半分の生徒を敵に回すと言っても過言ではない。

 つまるところ、榎嶋くんはすごい人なのだ。そんな人に私が意見できるわけがなかった。


 カラオケ入った後、一応お互いが“ベニバラ”と“白百合”であることを確認した。

 それから、私は今までの経緯や悩んでいたことなどを話した。辞書にすら否定されて悲しかったこと、親に釘を刺されて辛かったこと、そしてこの感情が本当になのか不安だということ・・・・・・。

 彼は、私の話を真剣に聞いてくれた。そして、聞き終わると静かに口を開いた。


「少し長くなるんだけど、俺の話をしてもいいかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る