4日目 心化粧③
ベニバラだ。彼とは中学生の時にSNSで知り合って、それから何年か連絡を取っている仲だ。彼はゲイセクシャルであることを公言しているから受け入れてくれる可能性は高い。
しかし、彼からしたら私の苦しみなんてほんの僅かなものだろう。“そんなの全然たいしたことないだろ”とは思われたくない。
そのとき大好きな小説の一節を思い出した。
◆ ◆ ◆
色々考えて動けなくなるくらいなら、前に進めば良い。暗闇の中でどこが前でどう進めば正しいのか分からなくなってしまっても、足を動かし続ければきっとどこかには辿り着く、そこが最初に目指していた場所とは違ったとしても。変なところに着くのを恐れて何もできなかったなら、どこにも辿り着けず全てが中途半端なままで終わってしまう。
◆ ◆ ◆
私は意を決して、ベニバラに連絡を取る事にした。思い返せば、彼はあまり他人に興味が無い、まあ自分自身にも興味はないのだけれど。それに彼との繋がりはSNS上だけなので、引かれたとしてもその後の学校生活に支障をきたす可能性がなかったのも大きい。
【いきなりごめん。ちょっと相談に乗ってくれない?】
それだけ送った。返信が返ってくるまでの時間が異様に長く感じられたが、私が待ちわびたそれは予想外に淡白だった。
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