4日目 心化粧①

 花火大会から数日が経ったが、その後のことはあまり記憶に残っていない。多分、フリーズした頭を無理やり動かしたからだと思う。

 それでも忘れることのできない。ただ単に驚いたから、想定外のことだから、そう思おうとしたけれど、それだけならどうしてこんなに忘れることができないのだろうか。


「これからどうしよう・・・・・・」


 ため息混じりに呟いた。もしこの感情をと呼んでしまったら、もう後戻りできなくなってしまうというのに。この感情は存在することで人を不幸にすることしかないのに。


「あーもー!」


 そう叫んで、思いっきり椅子の背もたれに寄りかかる。課題に集中しようとしているのに、がフラッシュバックして、自分自身ですら理解できなくなった感情がぐちゃぐちゃになって暴れまわっている。気を紛らわすためにお菓子を作ってみても、髪を編み込んでみても一向に気は紛れず、思い出すのはあの時のことだけ。

 真正面から向き合えばいっそ・・・・・・。そう考え直して、[恋とは]と検索すると、[に愛情を寄せること。また、その心。恋愛]と出てきた。世の中はマイノリティにとってこんなに残酷なのかと思った。他のサイトや学校指定の辞書でも調べてみたが、と入っているものばかり。

 同性那智に感じるこの気持ちはではないことになる。それなら、これは何だろう。友情でもない、この感情は。

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