3日目後半 夏の可惜夜②

 落ち着いてメッセージを打てるところに移動して自分の居場所を送るとすぐに既読になり

【そっちに向かうから待ってて】

 というメッセージが届いた。


 何分か待つと、那智と同じような服装の人が見えたので手を振って駆け寄ると、向こうも私に気づいたようで此方に向かってきた。

 那智が両手を広げていたので私は懐に飛び込む形になった。


「良かった・・・・・・。ごめんね」


「こちらこそごめん」


「よし、行こうか」


 そう言うと、那智の手が私の手に重なり指と指がからまり、強く握られた。予想外の出来事に私の頭は事態を呑み込むことができなかったようでフリーズしてしまった。動揺を隠せない頭を頑張って動かしつつ、大人しく手を引かれてついて行った。

 意識はどうしても繋がれた右手に向いてしまっていた。汗っかきなことに加えてこの気温。いくら半袖を着ているととはいっても、手汗が気になって仕方ない。

 今までも何度か女友達も手を繋いだことはあったけれど、ここまで気にしたことはなかった。

 どうしてこんなに気になるのだろう・・・・・・。

 考え始めたら止まらなくなってしまいそうで、普通に振る舞えなくなってしまいそうで、高鳴った心音に気付かないふりをした。

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