あとがき(設定集込み)


 この度は『緋色の時』を読んでくださりありがとうございました。

 無事に完結させることができて良かったです。


 話を書こうと思った最初の感情は「弱い選手を扱ったスポーツものを書きたい」ということでした。

 一般的にスポーツを扱う作品は、おおよそ全国大会優勝を目指すような、高いレベル、高い目標を持った作品が多いように思えます。

 卑屈だと言われてしまえばその通りなのかもしれませんが、実をいうと私はその手のスポーツ作品にあまり共感できた試しがなかったりするのです。

 それは、あまりに自分の経験と乖離しているからです。

 私自身──中学時代卓球部だったのですが、シングルスで市内大会を突破する程度の実力で、全国大会なんて夢のまた夢というプレイヤーでした。作中ですと緋色寄りの人間ですね。

 そこで、私は低いレベル、低い目標を持ったスポーツ作品があったらいいなと思ったのです。

 もちろん、低レベル低い目標ですが、やはり熱くなくてはなりません。

 弱いなりに熱い戦いが繰り広げられているということを私は知っているからです。

 熱くなくて良いなら、ギャグ路線でゆるふわスポーツ作品はわりとあります。


 とはいえ、蓋を開けてみれば全国クラスの選手が登場しまくってるので低レベルとは如何に?という話なのですが、主人公である内原緋色は最後まで大した実力を付けていないので、そこはお許しを。

 一応、本編には出てきていませんが、内原緋色の実力はシングルスで市内大会突破レベルを想定していました。

 私の女子市内大会では、基本的にツッツキの応酬の根気比べ、たまにいるドライブが打てる選手が市内大会を突破していくという悲惨な状況でしたので、緋色は『ツッツキばかりだけど良い球ならドライブを打てる』程度の選手です。

 私の市がレベル低いのかな〜?とか思っていたのですが、YouTubeとかで中学女子卓球の市内大会の動画とか調べると、本当にツッツキ勝負の試合がわんさか出てきたので、やはりこれが中学女子卓球(市内レベル)の真実だと思います。


『自分のやっていたスポーツ』+『弱い選手が戦う作品』が発端で、卓球を題材にして弱い選手を主人公にした作品にしようというところまで決まりました。

 ここから先は、どうやって作品にまとめるかという話なのですけど、実はこの作品最初に主人公の名前から決めました。つまり『緋色』を使うという前提で話が組み立てられています。

 理由は簡単で、『緋色の研究って読んだことないけど、緋色ってなんかカッコいいな』『熱い物語にするし緋色はイメージにマッチしてるな』この程度です。

 その後、あまりに初心者だけだと話が進まないと思い、卓球ができるキャラをメインヒロインとすることを決めました。この段階では常盤紡金という名前はできていません。

 雑書きの段階では「火凛」って名前にしてました。両方イメージは赤ですね。

 流石にイメージカラーかぶるのはダメだろ……ってことで、色でキャラを考える方向に向かいました。

 私は卑屈ですので、全国大会とかに出るようなプレイヤーを眩しくてみれません。

 そこで、メインヒロインのイメージカラーは金色と決め、金の文字が入った「紡金」という名前にしました。


 そこからは「緋色」と「金色」で何かできないかと考えて、最初は全キャラクター色を入れるか程度の考えだったのですが、緋色をググり『黄色がかった赤色』であることを知ったところから、一気に話の本筋が完成しました。


 赤色──緋色──金色という順番に黄色が強くなります。

 赤色は熱血のイメージですので、やはり赤は『努力』です。

 そして、金色は『黄金期』をイメージ。

 そうするならば、緋色という色は『努力を続けて黄金期に入ろうとしている時期』を示すことになるということで、物語の本筋がこれになったわけですね。


 結構本編で言えなかったことがここで言えて良かったです。

 それではあとがきはここまでとしましょう。

 また言いたいことができたら、あとがきに追記していくかもしれません。

 みなさま最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

 長雪先生の次回作にご期待ください。




 <設定集>


 緋色の時

 黄金の時代と対比する形で緋色の時代を描く。

 緋色……黄色みのある鮮やかな赤。黄金になりきれず真っ赤に燃える赤。


 緋色の音……鮮やかな血(緋色)が体を巡り、全身に響く心臓の鼓動を指す。周りと同調し、外界との境界が曖昧になっていた緋色が、自己を意識した際に初めてそれを認識する。鮮やかな赤=鮮血から。


 緋色の時……人生の黄金期(全盛期)に入る前の、ひたすらに熱く思い焦がれ、努力を重ね、黄金時代が見え隠れする時期を指す。努力を重ねる時期(赤色)と黄金時代(黄色)の間となる緋色から。


 登場人物

 内原緋色(うちはらひいろ)

 血液型:A型、誕生日:1月16日(座)、身長:139cm、性別:女、12歳の中学一年

 髪型:長さロング・前髪目にかかるほどの長さ、髪質:ストレート、髪色:黒色、瞳:黒色、体格:細め、服装:制服

 ラケット:SK7クラシック

 ラバー:表タキファイアドライブ 裏スペクトル

 クラスはCクラス。最初のうちは「もしかしたら」とか否定的な言葉が多かったが、自信がつくに連れてちゃんと話せるようになる。

 ちょっぴり夢見がちな長門中学校の生徒。性格は暗い方で、クラスで話せる人は殆どいない。妄想の中ではよく喋る。入学式の朝、早く来すぎて学校をうろちょろしているところ、卓球部の先輩と出くわし、一目惚れする。それが理由で卓球部に入部。

【同化】普段自己表現の乏しい彼女の自我を一気に解放する力。①一時的に彼女が思い描く姿になれる才能。②一時的に外界の状況を完全に把握する才能。

 得意技はツッツキ。元々、打てない選手としての暦が長い彼女は、ツッツキとストップを主体として、そこに読み合いを絡めた戦術を取っていた。そのため、ストップとツッツキの技術は一級品。元々手先が器用だったこともあり、同じフォームから回転量のことなるツッツキ、ストップを繰り出すことができる。打てる選手となってからは打つようになったが、そこまで強力な球を打つことができないため、一時的にむしろ弱体化した(2年次に緋色のダブルスが負けた原因でもある)

『未完の凡人』


『私の中で、緋色の音がなっている。溶け込むように生きてきた私の中には、これでもかと主張の強い私がいた。目を閉じればわかる。私を感じる。ここには私しかいない。曖昧になった境界は一度強固に形を保ったあと、解放される。私が、外へと流れ出す。何者でもなかった私は、今なら何にでもなれる気がした。瞳が、髪が、緋色に染まる。頬は淡く色付き、肌は真っ白な絹のように繊細で瑞々しい。ウィンクすれば惚れ惚れするほどの愛くるしさに頭がくらくらする。これが私。これが私なんだ。』(内原緋色・緋色の音)


『自分が人にどう見られてるかなんて、考えたらそんなの大概絶望的だよ。だから、せめて私だけでも最高に愛せる私をイメージしてあげなくちゃ。大切なのは自分が何を信じるか!』(内原緋色・緋色の音)


『緋色の人生はどうしようもなくうまく行かなくて。いつ諦めるか、どう納得するか……やめ時ばかり気にしてて。そんなダメな緋色をやっつけてくれた、あの一撃で……私は勝つ!!』(内原緋色・緋色の音)


『未だ黄金には届かない。ただ必死に手を伸ばし、もがき、あらがい、黄金になりきれずとも燃えろ。真っ赤に染まった私の中には、黄金に触れる何かがあるはずだから。それがきっと私の起源なんだ。私は今、きっと緋色の時を生きている』(内原緋色・緋色の時)


『私にできることなんて、最初から一つしかない。私が1番できること、それは……『想う』ことだけだ。恋焦がれ、夢焦がれ……強く何かを望み続ける。妄想しがちな私が小さい頃からずっと続けていたのは、これだけだった。この恋が成就するかなんて分からない。寧ろ、絶望的だとさえ思える。それでも……私はきっと先輩のことを想い続けてしまうんだ』(内原緋色・緋色の時)



 常盤紡金(ときわつむぎ)

 血液型:AB型、誕生日:4月1日(座)、身長:158cm、性別:女、12歳の中学一年

 髪型:長さ:ショート、髪質:癖っ毛、髪色:黒色、瞳:黒色、体格:細め、服装:制服

 ラケット:ティモボルALC

 ラバー:表テナジー05 裏テナジー05

 クラスはDクラス。口調は「かなー」など伸ばし棒を使いがち。まじめに話すときはかなりはっきりと話す。

 緋色と同じ、長門中学校の生徒。中1でありながら、最初の全国中学校体育大会では県内3位関東大会ベスト16入りと圧倒的な実力を持つ。小学校時代に卓球友達……金町悠里がいて、その子は他県の名門中学に行ってしまった。(初の体育大会では関東ベスト64と紡金より下)1年段階で、2人は個人戦で当たって、紡金が勝利している。紡金はダブルスをしたいことを悠里に伝える。悠里は反対したが、紡金の性格を知っていたため、自分もダブルスで出ることを約束。関東大会で会おうと握手を交わしたが、緋色紡金ペアは市内大会で敗退した。

 小学校5年で完成してしまい、その後の成長に伸び悩む。緋色という成長をやめない凡人を近くに置くことで、紡金はさらに進化をしていくことになる。

 彼女はあらゆる競技に置いて才能を発揮してきた。これまで行ってきたスポーツは数知れず。しかし、彼女は他のスポーツには明らかに理不尽な点があることに気付いていた。それは体格と運動神経。ほとんどのスポーツでは体格が良い方が強い。運動神経が良い方が強い。紡金はそれら全てを兼ね備えていた。彼女自身が理不尽な存在だったのだ。ほとんどの競技はその体格の良さとセンスですぐにマスターし、彼女にとってそれは楽しい事ではなかった。しかし、卓球では、たしかに成長が早かったが、それでも経験者には敵わない。しかも相手は、背の小さな子なのにだ。そして、卓球には理不尽さをあまり感じないことに気づき、自分が許されているような気持ちになった。だから、紡金は卓球を続けている。

 彼女の部屋にはものがない。彼女はすぐに物事をマスターし興味を失ってしまう。

【黄金器】どんなプレイでもこなすことができる。少しの練習で、あらゆるテクニックを習得できる。

 決め技はパワードライブ。基本どんなプレーも可能で、作中に登場するすべてのキャラの上位互換。ライバルである金町悠里の得意技であるスピードドライブ以上の速度、鋭さでスピードドライブを打つことができるが、3年次には1セット目限定であるが悠里に球速を抜かれた。

『黄金の世代』


「緋色ちゃん、目を閉じて。緋色ちゃんは良くも悪くも周りを見過ぎだよ。むしろ、周りに影響を受けすぎてる。今この瞬間だって、会場の罵倒に流されて自分の勝ちをないがしろにしようとしているでしょ。だから目を閉じるの。周りとの関係を断って。緋色ちゃんは緋色ちゃんだよ。きちんと貴方の音を聴いてあげて」(常盤紡金・緋色の音)


『そうだ。そうだよ! それでこそ緋色ちゃんだよ! 燃えたぎる赤き炎に見え隠れする黄金色。永劫未完の凡人。いつだってそうだったじゃないか。私の後ろには強者でなくとも、歩みを止めず私を脅かす者がいる。緋色ちゃんは言葉にせずとも伝えている。私に成長しろと。成長しなければならない。私自身のために。そして緋色ちゃんの手に届かない黄金でいるために!』(常盤紡金・緋色の時)


『『勝ち逃げみたいになってゴメンね』?違うだろ。勝ち逃げだ。私は客観的にも、主観的にも勝ち逃げをしていた。次戦えば必ず負けるという確信が私にはあった。だから逃げた。私は彼女には負けられなかった。今まで一度だって負けたことがないからだ。私は常に彼女より強くあらなければならないと、いつの日か心のどこかで思うようになっていた』(常盤紡金・緋色の時)


「ははは……無茶言うね、緋色ちゃん。一球ちょうだい。それだけあれば……覚えられる」(常盤紡金・緋色の時)



 藤代紫(ふじしろゆかり)

 血液型:B型、誕生日:4月4日(座)、身長:162cm、性別:女、14歳の中学3年

 髪型:ロング、髪質:パーマ、髪色:茶髪、瞳:黒色、体格:細め、服装:制服

 使用ラケット:未定

 使用ラバー:赤面ハモンド 黒面:スレイバーEL

 ヤンキー。普段部活には来ていないが、気まぐれで部活に来る。スクールカーストの低い人たちが集まる卓球部の中では唯一カースト上位の存在で、部長や3年の部員は彼女たちが来ると泣く泣く台を譲る。月一回の校内ランキング戦には毎回参加して、毎回一位を取っていく。校内では(常盤紡金を除き)唯一「打てる選手」。そもそも、長門中卓球部はかなり弱小な部活で、練習をしていないが運動神経とセンスだけで藤代紫が校内一番になれるという酷い状況。舎弟が2人いて、2人も卓球部。この2人は卓球ができない。


「何笑ってんだよ、この根暗女。キメェえんだよ!」(藤代紫・緋色の音)


 張替大翔(はりがいひろと)

 緋色の意中の先輩。優しめの性格をしているが、かなりの熱血。頑張る人が好き。卓球の実力は結構高め。関東大会出場できるくらいの力はある(県内有数の選手ではある)。

「そんなことしなくても最初から君のことを見ていたのにね。でも、お陰で目が離せなくなった」(張替大翔・緋色の時)



 金町悠里(かなまちゆうり)

 血液型:O型、誕生日:5月26日(座)、身長:154cm、性別:女、12歳の中学一年

 髪型:長さ:ロング、髪質:ストレート、髪色:金髪、瞳:黒色、体格:細め、服装:制服

 ラケット:SK7クラシック(小学4年生の時、紡金に選んでもらったラケットと同じものをずっと使っている)

 ラバー:表テナジー64 裏テナジー05

 和泉南中学校の生徒。身長は緋色より大きく、紡金より小さくしたい。

 紡金と悠里は互いに名前に金が入っていることから、小学校の頃は黄金の世代と呼ばれていた。そのこともあって、悠里は紡金のことをかなり意識している。性格はかなり主張の強い感じ。(秋風風子から幼さを取っ払った感じで書けばよい)個人戦では1年次で関東大会ベスト64と紡金よりは下であるがかなりの実力者。紡金のことが大好き!

 紡金からは勝ち逃げを恨んでると思われているが、悠里自身、紡金と戦えればなんでもいい。彼女を縛るために悠里は一度紡金に勝ちたいと思っている。ダブルスと言われた時には逆にチャンスだと思ったくらい。紡金に愛想を尽かされる前に一度勝利したいと悠里は考えていた。

【疾風】ゲーム開始直後、彼女の動きは最高速になり球のキレや、最高潮になる。試合が進むにつれて段々とその速度を落としていく。休憩を挟むことで、速度を取り戻していく。つまるところ、体力の計算ができないが、後先考えないプレーから放たれる球が驚異的な威力ということ。

 得意技はスピードドライブ。速度は同い年の中でもかなり速い方で、紡金に迫るほど。大抵の選手はこのスピードドライブ一本で通せる。彼女のスピードドライブを返すことができた唯一の選手であった羽鳥小春とペアになり、緋色紡金ペアに迫る。

 サーブは基本的にしゃがみ込みサーブ。

『黄金の世代』


「疾風!! 今の私は絶好調よ! 紡金にだってこの風は止められないわ! まして、ポッと出のあんなんかに、止められるわけがないッ!!」(金町悠里・緋色の時)


『私はいつまでも二番手でいい。でも一度、彼女から勝利をもぎ取りたい。そこで得た一勝は、彼女を一生縛り付ける。彼女は奪われたもの以上のものを奪い返そうと躍起になるはずだ。そうすれば、私はきっと永遠に彼女のそばに居られる』(金町悠里・緋色の時)


「私ってば本当にバカね。ダブルスは2人でするものだったわ。時間稼ぎは任せたわよ小春……金町悠里の復活は近い!」(金町悠里・緋色の時)



 羽鳥小春(はとりこはる)

 血液型:A型、誕生日:11月7日(座)、身長:167cm(中2時)、性別:女、12歳の中学一年

 髪型:長さ:肩より少し長いくらい、髪質:少し癖っ毛、髪色:茶色、瞳:黒色、体格:でかい、服装:制服

 ラケット:コルベル

 ラバー:表タキネスチョップ 裏カールP-1Rソフト

 和泉南中学校の生徒。悠里のペア。カットマン。ふくよか少し。一個下なのにスタイルがいい。緋色はそれに絶望してる。小春はそこまで優秀な選手ではなく、同じ学校には、自分より強いカットマンが存在することもあり、団体戦にも選ばれなかった。悠里が団体戦メンバー以外からダブルスメンバーを選ぶ時に、彼女のドライブを止められた唯一の人物であったため、ダブルスのペアに選ばれた。性格は緋色ほどではないが自己主張が激しくない方で、悠里の後ろで淡々とプレーする。体力の続かない悠里とはこれ以上ないほどに相性の良い選手であり、後半悠里がバテてきたところで、小春の遅延が光ってくる。

【鉄壁】大きな体躯のため、守備範囲が他の選手よりひろい。体力もあり、試合終盤までバテない。得意技はカットとプッシュ。甘い球は粒高でのプッシュで仕留めにくる。

『南中の巨壁』

「私は部外者ですけど、それは先輩の手助けをしない理由にはなりませんから。私にも手伝わせてください」(羽鳥小春・緋色の時)



 全校生徒540人

 長門中卓球部

 1年生18名(Cクラスからは3人)

 2年生16名

 3年生13名(藤代紫とその舎弟含め)

 部長:牛久先輩

 C組の部員:

 石岡さん……背が高い、ショートで前髪は長め。こいつは絶対インキャ。正しく卓球部。唯一のカットマン。岩間さんとダブルスを組んでいる。

 岩間さん……右側の髪を赤いリボンで結んでいる。お洒落に気を使っており、顔は卓球部にしては可愛い方。片面粒高の選手。石岡さんとダブルスを組んでいる。


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緋色の時 長雪ぺちか @pechka_nove

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