第29話:タイガvs黒装束E

―タイガvs黒装束E―

黒装束E「サムライ、お主に恨みはないが、死んでもらう事になる。」

タイガ「やれるものならな」

黒装束E「皆、そう言う。生きている者はおらぬが。」

黒装束Eが足元から頭にかけてだんだん消えていく。

タイガ「透明人間?」

黒装束E「左様、残念だがもう二度と某の姿を見ることはない。」

タイガ「見たくもねーよ!」

タイガは刀を抜き、黒装束Eが立っていた所を大きく斬りつける。

既にそこに黒装束Eはいなく、空を切る。

透明な黒装束Eは、タイガの背中にクナイを刺す。

タイガ「ぐっ!」

黒装束E「ふふふ」

タイガ「痛えな!」

黒装束Eの声のする方向に刀を振るも、空振り。

次々と斬りつける黒装束E。

タイガは触覚を研ぎ澄まし、深手は追わない程度に躱すものの、徐々に切り傷が増えていく。

黒装束E「どこからくるかもわからぬ攻撃に恐怖を覚えるだろう。」

タイガ「恐怖?笑わせるな、楽しみだよ、心置きなく力を試せるんだから。」

タイガは目を閉じ、修行時代を思い出す。


― 数年前 ―

目隠しをしたタイガがハンゾウに木刀で叩かれる。

タイガ「いってー」

ハンゾウ「私に一撃くらわせるまで終わらぬぞ」

タイガ「御師さんに目隠しで当てるなんて無茶です。目隠しなしでも当てられないのに。」

ハンゾウ「タイガ、当てられないのは見えている物をただ切ろうとするからだ。目に頼り過ぎなんだよ。」

タイガ「?」

ハンゾウ「見るのではなく、感じる事だ」

タイガ「感じる…?」

ゴン

タイガ「いてっ!」

ハンゾウ「相手の呼吸や心臓の音、空気の揺れ、見えなくてもわかることは沢山あるだろう。」

ゴン

タイガ「いってー」


― 現在 ―

タイガ「沢山タンコブ作ったなぁ…」

黒装束E「これで最後だ。」

タイガは初めて当たらずに躱した。

黒装束E「まぐれだ」

タイガ「まぐれじゃない」

黒装束E「ならもう一度」

タイガは見えない黒装束Eのクナイを刀で止める。

黒装束E「何?!」

タイガ「じっくりといたぶって殺す趣味、やめた方が良かったな」

黒装束E「たまらぬのだよ、恐怖に怯える表情と声が」

タイガ「サディストのかまいたち野郎!」

タイガは目を閉じたまま一度刀を鞘に戻し、抜刀術の構え。

黒装束E「トドメをさしてやる!」

見えない黒装束Eの近づいてくる気配がすると、スパンと音がなり、クナイの先半分が切れて透明でなくなり、地面に落ちた。

タイガは目を開け再び鞘に刀を納める。

血が出すぎたタイガは片膝をつきしんどそうな顔つき。

黒装束Eはタイガの背後で立ち止まっていたが、血を吹き倒れた。


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