第19話:イヴ=ワース
各々配置に付き、予告時間を待つ。
レイ「そろそろだね。」
アリス「そうね。じゃあ…」
というと目を閉じる。
アリスからアリスが量産されていく。
レイ「…分身??」
アリスだけで40人ほどの一つの部隊が現れた。半数は部屋を出て、周囲の見回りに行く。
レイはイチローを見ながら、
「俺ら必要?」
イチローは苦笑い。
建物の警報が鳴る。
皆の目つきが変わる。
家来「逐一状況報告を怠るな!」
無線で指示する。
刀のショーケースを背にして囲む一同。
家来「あ!!」
振り向くとショーケースの中に下から手が生えており、宝を掴もうとしている。
タイガは刀を抜きショーケースごと手を切ろうとするが、手はすり抜け、ケースのみ真っ二つに。宝は既に消えている。
アリス「下よ!」
アリスは床に向かって斬撃を繰り出す。
床に切れ目ができ、下の階の天井裏に宝を持つ女が見えた。ハットを被り目隠の仮面を着け、白いスーツの女性の姿。
女はニャっと笑うと、わざわざレイ達のフロアに向かってジャンプ。床をすり抜けフロアに着地。
アリス「久しぶりねイヴ。アンタのせいで顧客の信用を失った。忘れてないからね。必ず捕まえる!」
アリスには因縁があるようだ。
イヴ「私は絶対に捕まえられない。怪盗となるべくして神に与えられたこの能力。」
タイガ「一つ聞きたい事がある。その刀は盗んでどうする?」
イヴ「元の持主イケダ家の末裔が大病で余命宣告を受けた。先祖の大切な刀が富豪の趣味として所有されている事が心残りだと。亡くなる前に返してあげたいだけよ。刀もその方がいいはず。」
家来「は、早く捕まえろ!」
スパンと音がなり、タイガが家来を見えない早さで切る。
レイ「え、なんで!」
タイガ「峰打ちだ。イヴ、行っていいぞ。イケダさんにはずっと世話になってきた。渡してやってくれ。」
アリス「行かせない、2度も同じ失態はおかさない!」
アリスはイヴを斬りつけようとするも、タイガが前に立ち塞がり、剣を交える。イヴはまっすぐ出口へ歩く。
出遅れたレイとスズキ兄弟もイヴを捕まえようとするが、体をすり抜け実体に触れられない。
部屋の壁沿いにアリスの分身が包囲しているが、焦る気配のないイヴ。
イヴ「このthroughの能力の前に全ては意味がない。」
アリス「私が何も用意してないと思う?」
分身が隠していた強力磁石の装置を構え、イヴに向けると宝は手を離れ、装置向って飛び、貼り付く。
イヴ「考えたわね。」
宝を取られたイヴは笑みを浮かべ、装置に向かって走る。
レイはイヴより先に装置に辿りつき、刀を手にする。
剣を交えたまま拮抗して動けないアリスとタイガ。
宝を持つレイを守るアリスの分身達。
レイ「タイガ、やめるんだ、こんな事して。ゾゾの部下だろ!」
タイガ「ゾゾになど元々忠誠など誓ってない!」
レイ「アリスから離れろ、剣を交える必要はないだろう!」
タイガ「ちっ」
タイガはアリスから離れる。
アリスはすぐにイヴに向うも捕まえられない。
イヴはアリスの分身をすり抜け、レイのもつ宝に手を近づける。
アリス「レイ、絶対離さないで!」
刀を強く握るレイ。
イヴが刀を掴んだ。
その瞬間、アリスの分身達がイヴを掴む。
アリス「やっぱり、物を触る時だけは実体なのね。」
イヴ「くっ…」
ゴローが捕獲用の首輪をつけようと近寄る。
宝から手を離し、再び能力を発動したイヴ。
アリスの分身の拘束からすり抜ける。
イヴ「今回は諦めるわ、攻撃せずに彼から奪えそうもない。とはいえ、危害を加えるのはポリシーに反する。またね、アリス。」
イヴは床をすり抜け、消える。
アリス「待てっ!」
レイ「アリス、諦めよう。依頼は達成しただろ。」
アリスは落ち着いた。
タイガ「すまなかった、アリス。」
アリス「いいわ、次こそ策を練って捕まえる。」
レイ「それにしても、本当に義賊なんだね。ケガ人すら出ていない。」
タイガ「俺が1人…」
床に倒れて気絶した家来の姿。
レイ「攻撃が早すぎて誰にやられたかも絶対わかってないね。」
笑うレイ。
タイガ「刀を渡してくれ。ゾゾに報告しに行こう。」
天守閣に呼ばれた一同。
ゾゾ「皆の者、よくやった。あのイヴ=ワースから世界で初めて宝を守りきった。私の力を世に知らしめる事ができた。」
レイ「なんだよ、宝を守った事より自分のアピールしたかったのか…」
アリス「そういう人よ、宝が心配なだけなら予告状が届いた時点で展示をやめて誰にも見つからない所に隠すわ、普通。大顧客じゃなきゃぶった斬ってる。」
ゾゾ「これは褒美だ。」
1人1人に金の延べ棒を配る。
レイ「さすが金持ち…」
アリス「受け取ったらよく見て、引くから。」
レイ「うわっ…」
延べ棒にはゾゾの顔が大きく刻印されていた…
ゾゾ「家来から聞いたぞ、小僧。頑張ったらしいな。」
気絶していた事をゾゾに言ってほしくない家来が皆の事を盛って報告していたようだ…
レイ「小僧じゃない、レイ=ジェンナーだ!」
ゾゾ「お前が有名になったら覚えてやるよ、うちの警備に来たってな」
アリス「まぁまぁ」
レイをなだめるアリス。
タイガ「レイ=ジェンナーだと?!」
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