第61話 奉行様

先日、社員全員にて食事をする機会がありました。いつもは居酒屋なのですが、今回は焼肉でした。焼肉奉行様が現れると楽しい焼肉が半減するので、私は奉行様が嫌いです。やはりいました。もうお判りだと思います、やつが奉行様だったのです。


このお店は、通常のテーブルのセンターにコンロがあり、私とあの営業(今後はAとします)がコンロを挟む感じで座りました。注文も終わり、焼肉が運ばれてきます。Aがトングを持ち、肉を焼きに入ります。その間、私はじっと見ていました。すると上司から「手を動かして」と言われるので、私も肉を置きます。網にスペースもなくなり、焼き加減を見るため、肉をめくると「それまだです」と言ってくる。さわろうとする前から言ってくることもあるので鬱陶しい。なので任せることにして、何もしないでいると、上司からまた「手を動かして」と言われる。どうすればいいの?って感じになります。そこからは、ちょくちょく手を動かして手伝うふりをしていました。

その後もAは、「焼けました。」と言って各個人の皿に肉を置いていきます。それを私たちが食べる。それが続きます。女の子が野菜を焼こうにも、「私が焼きます。こ焼けたらここに置きますので」って感じで、何もできない状態です。

 肉はとてもおいしかったが、なんか腹が立った、しっくりこない会だった。しっくりこないので、私はネットで検索してみた。すると、焼肉で肉を人の皿に置くやつを嫌いという人が多いことが分かった。確かに、自分のタイミングで食べたいし、好みの焼き加減だってある。それを全部、Aが仕切っている、Aの加減で。だから、しっくりこないわけだ。持論だが、焼肉を食べた後は、お腹を壊すこともセットになっていると考えている。

自分のタイミングで食べるからだ。この自分のタイミングとは、半生気味で食べること、猫舌なので肉はぬるいくらいで食べることだ。鳥や豚に関しても、少しくらいは生の部分があってもいいと思っている。だが、その肉(鳥や豚)を取ると「まだ。早いよ」とか「お腹を壊すよ」と言ってくるやつは死んでほしい。もちろん私は、そんなことは知っている。知っての上で食べている。焼きすぎの方がもったいないのでは。パサパサになったおいしくない肉を食べるくらいなら、私の好みの感じで食べたい、その方がよっぽどおいしい。それを発したその口に熱々の炭をぶち込み、もう言葉を喋られないようにしたい。

後日Aがいない時に、この場の焼肉に同席した女子に聞いてみた。Aの焼肉での振る舞いが、とても嫌だったらしい。やはり、みんな自分のタイミングで食べたいらしい。さらに自分の皿に置かれるのは最悪だったらしい。肉を網に置きたいし、焼きもしたいとのことだった。網とトングを独占し、食べごろもAの加減なので最悪らしい。

結論、焼肉は一人で食べるか、同じタイミングの人と食べるの一番だと思う。大人数ではやめておきましょう。


私の若いころは、「彼女と焼肉を食べるときはエッチをしてから食べること」という都市伝説的なものがあった。確かにその通りだと思う。もしAのように振る舞ってしまったら、彼女はドン引きして去っていくだろう。エッチができずにこの恋は終わってしまうことになる。納得した。


肉が焼けた、焼けていない前に、生肉をつかんだトングので肉を配るのはいいのか?そっちの方が、生肉以前にお腹を壊すのではなかろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る