一難去って・・・
(簡単簡単、見ろよ優人あの情けない姿、完全に油断しているじゃないか・・・あれが野生の獣か?な?あんなの訓練の動かない的よりも簡単に当てられるぜ!さあその身の丈不十分な銃であの畜生のどたま吹っ飛ばしてやれ!さあ何やってんだ!このケツの青い糞ガキの短小野郎!狙いはついてんじゃん!さっさと引き金引けってんだよ!)
いくら心の中で自分にそう言い聞かせても引き金にかかった指が凍ってしまったように動かない。気が付けば全身が冷や汗に包まれていた。
そうしている間もゴブリンは、自分が狙われているとはつゆ知らず、まるでこの世に自分の敵はいないとばかりに、無防備に木から実をむしり取っては幸せそうにむしゃむしゃ食べていた。
(撃てよ!馬鹿め!あんな動きもしない糞野郎にすら撃てないなんて!おめー訓練やってきたじゃん!3年だぞ!そんなに訓練やってんのに!何時かこうなるってわかってたじゃん!殺せ!殺せ!撃って殺せ!あのクソッタレ脳みそぶっ壊してやれ!引き金を引け!この馬鹿!)
そうやって自身を励まして何とか引き金を引こうと決心した時には、ゴブリンが木の実を満足するまで食べて移動しようと、その臭いケツを持ち上げた時だった。
(あっ行っちまう・・・)そう思った時に不意に銃声が鳴った。
えっと思って銃を見ると引き金が引かれていた。
今度はゴブリンのほうへ目を向ける。頭部がなくなっていた。
呆けた顔で銃を見て、またゴブリンの方を見る。
「」
完全に不意打ちを食らってしまい、彼はしばらく何も考えられなかった。
ふらふらと完全に動かなくなったゴブリンの傍まで近づき、やおら嘔吐。
「ゲー!ゲー!」
彼には見えてた、銃弾がゴブリンの頭部を破壊して飛んでいくその光景が。フクロウの動体視力がここにきて仇となったのだ。
しばらく悶絶していたが、やがて売れそうなものを取り出すべく解体にかかった。
(さいっっっっやく!)心の中でそう毒づきながら、震える手で解体していく。その解体は以外にも手際が良かった。
「えっと、肉は食えるし、骨は粉末にして薬にも食用にもなる、だっけ・・・」そうぶつぶつ言いながらも解体の手は緩めない、とそこで視線に気づく。
「なんだお前ら・・・食いたいか」「キュー!」「ホー!」
その視線の主はシャチとフクロウだった。どうやらゴブリンの肉を食べたいようだ。
「・・・ほらよ」渋々肉を手渡すと、すぐに噛り付いてきた。
「キュー!」「ホー!」とご満悦そうに肉にかぶりつく。その幸せそうなフクロウとシャチの表情に、不意にさっきの幸せそうな表情のゴブリンの顔が思い浮かび慌ててかき消す。
(もう終わったことなんだからいちいち思い出すな、この馬鹿め・・・)
・・・・・・・初めてのダンジョン初めての魔物と言う緊張感、初めての殺害の罪悪感、初めて自分で殺した獲物を解体したという達成感、それらのことで頭がいっぱいだった。
それらのことにしか気が向かなかった。使い魔たちが必死になって何かを伝えようと必死になっていることにも気が付かなかった
「あん?何?もう食べなくていいの?つか何さ」
いつのまにかオールとジンベーが食べるのをやめていた。そのうえ各ポジションに戻り必死に何か伝えようとしているかのように、キューキューホーホーモグモグわーわー喚いていた。
「何が・・・なんd」なんだかとぼやこうとして、ハッと気づく。
いつの間にか囲まれている。数は三。呼吸やニオイ、エコーロケーションにより相手が人間だということがすぐに分かった。
初心者がダンジョンに入るうえで注意することの中で、注意することは何も魔物だけではない。このような質の悪い人間、いわゆる初心者狩りと言われるものも含まれる。
「だっ誰ですか!」上ずった声で何者か問う。
すると前方の木の裏からガラの悪そうな男が一人出てきた。
「おやおや~、その年で~鋭いね~^^」とゴブリンの断末魔のごとき気色の悪い猫なで声で話しかけてきた。
「こんなとこで一人は危ないよ~^^」いつの間にか出てきたのか台に第三の男が後ろにいた。
「単刀直入にいうぜ~、装備有り金持っているモン全部お兄さんに~頂戴して♥」
「嫌です」と言おうとしたが、それよりも早く前方のリーダーらしき男がずいっと一歩踏み出してこう言った。
「まっ答えは聞いてないけどなぁ^^」
「-------!」
と悪意全開な表情と声、それに加えて精神的疲労、先ほどの罪悪感がまたぶり返してきてしまい、彼は・・・・・・・・
悪漢3人は何が何だか理解できないまま、脳を超音波で高速で揺さぶられ、融解した脳を鼻からこぼしながらこと切れた。
彼はジンベーのソナーを音を操ることに昇華させることに成功していた。それにより元々シャチが音波を当て獲物を気絶させられるのと比ではないほどの威力にすることができた。
今使ったそれは音波により脳を直接超振動させ、脳を破壊するというものである。
彼は完全にパニックに陥り、その場から駆け出してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます