第5話 ベッドの中で


『えっと、1番盛り上がるシーンのセリフが決まらないって言うか……』


 実際のところ、もっとえっちにしたいんだよね。


 あたし、こういう経験したことないし。


 だから、体験してみたいって言うか……、


『あたしとベットに入るの、いや?』



『あたしと一緒にベット行こ』


『えっちな気持ちにしてあげるから』



『ん。素直な人って大好き』



 ……やばい、どうしよ。

 ほんとに緊張してきたかも。


 あたしからは触れないように、ゆっくり……。


『もう1回言うけど、本当に触れたりしないから安心してね』


『声と音だけだから』



 触ってくれるのは、止めたりしないけど……。



『大丈夫。こっち来て』


 ……どうしよ。

 ほんとに2人でお布団に入っちゃった。


 このまま顔を埋めたいけど、それはさすがに警察だもんね。



 スーハー、スーハー、スーハー……。


 うん、香りだけにしとく。


 あたしは襲ったりなんてしない。


 誘惑はするけど、それは自己責任だから……、


『目を閉じて、あたしの声に集中して』


 基本は吐息混じりに。

 耳元でゆっくりささやく感じで……、


  ☆ ☆ ☆


『ねぇ、借金の肩代わりしてくれたお礼に、ご奉仕、していい?』


『ん? 見返りを求めてやったことじゃない?』


『ん。わかってる。このご奉仕は、あたしの感謝の気持ち』



『男の人ってさ。ご奉仕、されたいんでしょ?』



『大丈夫。あたしが気持ちよくしてあげるから。ご奉仕、させてくれない?』



『例えばなんだけど、こうやって、耳元に近付いて、ふー……って』


『ふふ、どう? 気持ちよかった?』


 ……。


『体の方は素直だね?』


『あたしはなんでもしてあげるよ?』



『気持ちよく、なりたいでしょ?』



『……ふふ。ん。りょーかい。あたしが気持ちよくしてあげる』



『右耳のすぐ側に、あたしの唇があるのわかる? あたしの吐息とか、感じちゃってる?』


『いいよ。あたしの吐息、感じて』


『さっきは、ふー……ってしたけど』


 はー……。


『……ふふ、どうかな? 気持ちよかった?』


『本当のご奉仕はもうちょっと待ってね。そっちの方が気持ちよくなれるから』


『あたしも緊張してるんだよ? あたしの心臓の音、聞かせてあげよっか?』


『聞きたい?』


『あんたの耳にあたしの体が当たるんだけど、大丈夫? 具体的にどことは言わないけど……』


『わかってる? そっか。……へんたい』


『いいよ。あたしの音、聞かせてあげる』



 トクン、トクン、トクン、トクン……。



『どう? えっちな気持ちになる? それとも落ち着く?』


 トクン、トクン、トクン、トクン……。


『こうしてると、あたしの方がえっちな気分になっちゃうかも』


『でもまだダメ。もうちょっと我慢して』


『せっかくなら、あたしも一緒に気持ちよくなりたいし』


『一応、あたしも、あんたを気持ちよくしようと思っていろいろ調べたんだよね』



『耳、なめなめしてあげよっか?』



『して欲しい? ん。いいよ』


 あーむ。


 ぴちゅぴちゅ。


『ふふ、またぴくんってした』


『あんまり力はいれないで、リラックスしててね』


 ぬにゅむにゅ……。



『ん? もうちょっと激しくして欲しいの?』


『ん。いいよ。やってあげる』


 ぺろ……。


 じゅるる……。


『こんな……、かんじ……?』


『きもちいい、かな?』


 はむ、じゅるじゅる……。


『こっちも、御奉仕、するね……』


 じゅるる。


『ん……。きもち、よさほうな、かお、するじゃん……』


『このへんが、いいの?』


 べろ、れろ……。


『えあんたの気持ちよさそうな横顔見てたら。お腹の下の方が、ギュッて……』



『そろそろ、触ってもいい?』



『……いいよね? 触るからね?』



 ……。


『ベルト、はずすから、腰を浮かせて欲しいなって……』



『……ん。ありがと』



 ガチャガチャ。



 ……あれ?

 これ、どうやって​――


 

 ​ヴヴヴー、ヴヴヴー、ヴヴヴー……、


「――ひゃっ!!!!」


 ゴロゴロ、バタン!


「痛ったっ――……。お尻打ったんだけど。もぉ……」


 もうちょっとだったのに!


 マナーモードじゃなくてサイレントにしておけば、


「……ん? あれ? でも、助かった?」


 あのまま手を出してたらさすがに――


「ひゃっ​──!!」


「えっ、えっと、なんでもない! なんでもないから!」


 やばい、やばい、やばい!


 どう考えてもやりすぎ!!


 あのまま進んじゃってたら、あたし……、


「えっ、演技はここまで。本当にありがと」


 うん。演技はここまで。


 暴走はしてない、よね……?


 ギリギリセーフ、だよね?


「そっ、それでなんだけど、あたし、お化粧直しに行ってきていい?」


「いまので崩れたっていうか。崩れてないんだけど、崩れたっていうか……」


 えーっと……、


 心を安定させたいって言うか……、


「ん? 大丈夫? ……ありがと」


 どうしよ。


 優しすぎて泣きそうかも。


 惚れ直しても仕方ないよね?


「えっと、それでなんだけど。ちょっとだけ、時間かかるかも……」


「大丈夫? ん。ありがと」


 やばい、好き……。


「あっ、でも、その前に……」


 このままじゃ、さすがに味気ないよね?


「ちょっとだけしゃがんでくれる? 耳、借りるね」



『御奉仕の続きは またこんど。それまで期待して待ってて』


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