仁–第伍夜:文と足

ーその日の夕方、辰は壬生寺に一人で向かった。

壬生寺の門の近くに所々真っ白な砂が撒かれていたが無視した。


「(死を砂で隠したか。無意味な事を…)……‼

…来てる来てる」

確かに満開の八重桜の枝にちょうど眼の届く高さに文が結び付けられていた。


上等な紙に書かれた達筆な手紙。内容を少し掻い摘んで呼んだ。

内容はと言うと… 


ー用心棒の辰様へ

いきなりのご依頼すみません。私、…………………の……と申します。今助けて欲しいのです。………………… …………。事情と報酬はその時に話します。……ー蜜柑ー


この………の部分は何も書かれていなかった。

もし、他人に読まれてもの対策ってヤツか。

そして蜜柑には流石に頭を捻らせられた。

依頼人の名前が分からない。場所も分からない。事情も分からない。

「(あ”〜どうすっかな…‼︎)」

そう心の中で苛立ちを抑えて、依頼を受ける以前の内容の解読を諦めようかと思いかかったその時、


すると向こうから何か音がした。

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