第伍夜:そして、また始まりへ

バッッ‼

辰は刀を斜めに振り、刀にこびり付いた血を払った。

彼に傷はない。

最初に斬られた傷も、何もかも。


そして己の力で変わり果てた姿になった死骸を見て呟いた。

膓が飛び出ている者、系動脈が切られて真っ赤になっている者、粉となり崩れ落ちた者…

「“諸行無常”、か…俺を憎むんなら自分の非力さを憎むんだな」

そう言い肉体が残る一人一人の額に“来世永劫”と血塗れの指で書き、刀を一つ一つ収め傍らに置いた。


そして辰は何事も無かったかの様に柳に結び付けた魚を持ち、歩きだした。

その顔は何故か少し悲しげな顔であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


…プツッ‼

「あっ…‼」

ゆらりゆらりと柳に結び付けた魚を持って彼が歩く中、いきなりこめかみ辺りから血が噴射された。


彼もやはり無傷…ではなかった。


「うわ、ヤバッ‼血が出てる‼出てる‼(焦)」

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