第参夜:紅い夜の牙

倒れた辰の周りに男は集まった。

服には血が流れ出ている。呼吸の音が聞こえない。体温の温もりすら無い。死んだらしい。

『…以外と呆気なく遺骸となりましたか』

『お!珍しく洒落か』

『つまんねぇけが上手いな‼』


そう言い一同はドッと笑った。


『はぁ…これで死んだ仲間も浮かばれるな…』

そう誰かが空を見上げて呟いた。

すると


「死んだ仲間ねぇ…」


死んだ筈の“用心棒”が、倒れたまましゃべった。


『おっ、お前死んだんじゃ無いのか⁉』

そう男が言うと“用心棒”は、ゆらりと立ち上がろうとした。


「そんな簡単に死んじゃあ用心棒務まらないよ」

そう言うと懐を探りながら立ち上がった。

ビチッ‼

斬れた川魚が落ちた。身代わりになったのだろう。

「あっ、勿体な」

そう言い魚を全て拾い柳に結び付けると異様な姿の男等を見渡した。

「道理で見たことがあったと思えば…“獣人武”の端にも置けねぇな‼」

その顔は怒りと何かが入り交じった表情をしていた。


「(本気出そっかぁ…)すぅ…“龍解”‼」

そう言うと彼の姿が変わった。


眼は深紅の赤に、首、手の甲、頬等には鱗が出てきた。

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