俺は人を信じない。仲良くしても…心の底からは
第壱夜:紅い夜の始まり
「祇ぃ園精ぉ舎の鐘~の声~
諸ぉ行無常の響〜きあ〜り~
沙羅双樹の花~の色
盛者必衰の理を表す…」
深い勝色の(藍染のかなり濃く染めた段階の色。藍色より濃く、縁起が良い色でもある)手拭いを首から鼻の高さまで巻き、髪は天辺にまで上げ、翠の飾り紐で1つに結って暗くなりだした道を歩く青年は京の一部では見た事のない者はいない。
彼は周りから“用心棒の辰”と呼ばれ幾つかの噂があったーー
“彼はかの源九郎義経公の生まれ変わりだよ”
“彼の刀は鬼が作った刀だそうだ。大木だって真っ二つだそうだ‼”
“義経じゃなくて彼はきっと大和尊命の生まれ変わりに違いない”
…と様々だ。面倒だ。それに大木は切れん。
彼が何処かで平家物語の冒頭を歌っている時は仕事がある。
次の日にはどこかに書かれた“来世永劫”の字と共に必ずあらわる。
そう言われるほどの腕だった。
「あっ‼用心棒のにーちゃん‼儲かりまっか?(笑)」
路地裏から暗い萌木色の服を着た少年がニギニギをしながら話しかけた。
「お、お前…‼︎」
辰がその少年の方を向く。
そして一歩近づく…
「随分生意気な口を聞きやがって~‼そう言うのはこの口か~‼」
少し屈んでそう言うと彼は少年の頬を軽くグイーっと引っ張った。
おっ、モチモチしてる…‼
「止めろよにーちゃん‼卑怯だぞ‼」
「お前の背が小さい事と十年程生まれんのが遅かっただけだ‼」
「やっぱズリィ‼」
そう言う少年が殴りかかろうとしたが彼はその少年の頭をポンポンと撫でるかの様に掴み、抑えた。
「辰さん‼よかったらこの魚持って行きな‼活きが良いよ‼」
「ありがとうございます」
ペコリ
彼が以外にも子供好きで子守りをやってくれたり、騒がしい浪士を『赤子が起きる』と一人で黙らせた噂(苛ついていたのもあって実際にやった)もあるので町の人からは人気があった。
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