第27話お喋りな刑事

 24-027

泊は嬉しくて、嬉しくて我慢が出来ない、誰かに話したいから、ムズムズしていた。

一緒に聞き込みに出掛けた上月にも「新婚は最高だ、これで子供が出来たら、俺は変に成ってしまう」とそれらしき事を喋る。

「先輩、今度の事件は子供の非行で、両親からの訴えで。。。。」

「そんな子供には絶対に成らないよな」

「泊さん!何を言っているのですか?両親が甘やかしたと嘆いているでしょう?非行に走って薬に手を出していると訴えが有ったでしょう?」

「何歳だった?」

「二十歳ですよ、何を聞いていたのですか?変ですよ!泊さん」

「捜査会議の時、ぼんやりしていたな」

「奥さん貰って呆けましたか?」

「呆けもするよ、この歳でおやじ。。。」とぼそっと言う泊。

「親父さんは亡くなったでしょう?」

「そ、そう」全く話が噛み合っていない。

非行に走った子供の両親に会っても、子供は可愛いからとか説得する話を始める泊刑事に驚く上月。

夕方に成って「実は、俺子供が出来たのだよ」と我慢が出来なく成って話してしまう泊刑事だった。


夜に成って小菅が「凜香!知っているか?」と凄い勢いで話す。

「何を?」

「お母さんに子供が出来た事」

「えーーーー」今度は凜香が大きく驚くとお腹の美千代が飛び起きて(何?子供?お母さんに?もしかして?釜江さん?わー!親子で?神様が近い場所とか話して居たかも?)と考えていると「お母さんも食べ物の好みが大きく変わっていたから、同じ時に妊娠したの?」

「山中温泉?」

「そうよ、間違い無いわ、今朝も変な事話していたわ、聞いてみる」

(間違い無いわ、半日違いでこの世に戻ったのよ、でもいつに成ったら外が見えるのだろう?釜江さんと話がしたいわね)美千代は急に楽しくなってきた。

「お母さん、妊娠したのでしょう?」

「えー、凜香何故?」

「馬鹿ね、旦那さんが警察で喋ったらしいわよ」

「ほんとなの?恥ずかしいわ」そう言うと話しも途中で電話を切る香里。


「貴方、警察で喋ったの?」

「何を?」

「子供が出来た事」

「上月に少し」

「もう知らない人は居ないわ」

「あの男口が軽いな、刑事とは思えんな」

「貴方も一日で話してしまったじゃないの?」

「でも、嬉しくて我慢出来なかったよ、お腹大丈夫だったか?」と香里のお腹を優しく撫でると「貴方、そんなに嬉しいの?」

「人生で最高だよ、香里との間に出来た子供だからね」と抱き寄せるとキスをする泊。

「う、そうな。。。」と言いながら唇が、舌が絡み合う二人。

「愛しているよ」

「私もよ。。。」

(おいおい、妊娠して俺が居るのを知っているのに?またか?この二人好きだね)と呆れる勝弘。

しばらくして(やめろ、俺の身体が持たないよ、目が廻るーーー)と気絶した勝弘だった。


「おかしいわね?電話に出ないわ」凜香が再び電話をしたが、、、、

「変な事聞いたから、喧嘩しているのだよ」

「そうよね、御主人が喋ったと言って、言い争っているのね」

「そうだよ、我々が夫婦げんかを作ったのだよ、しばらくしてから謝って置いた方が良いよ」

「判ったわ」二人は全く異なる心配をしていた。


「貴方、子供がお腹に宿っている時にSEXすると、子供が馬鹿に成るとか、流産するって聞かなかった?」

「そうなの?でも我慢が出来なく成って、つい!」

「同じよ、私も再婚して目覚めてしまったみたいよ、それに貴方とは相性が良いみたいなのよ」

「それで、この歳で子供が出来たのか?」

「そうかも知れないわ」と再びキスをする二人だった。

ようやく電話の着信に気が付いて「あれ?凜香だわ」と栗色の乱れた髪を直しながら「どうしたの?」惚けた様に言った。

「お母さん、ごめんね!変な事言ったから旦那さんと喧嘩に成ったのでしょう?」

「喧嘩?」

「だって何度も電話したのに、出なかったから」

「あ、そうなの、何度も?場所が。。。」と言う香里を風呂に誘う泊。

「喧嘩するわけ無いわよ、じゃあ」と電話を早々に切ると、二人は嬉しそうに風呂場に向かう「僕が洗ってあげるよ」

「えー、優しいわね」

「子供がお腹に居たら、身体を動かすのが大変だからね」

「今先程、もっと動かしたわよ」

「あっ、そうだったか、夢中で忘れていた」と仲が良い二人だった。


翌週香里が一人で病院を訪れて、医師からおめでとう、高齢出産だから気を付けて下さいと言われて上機嫌で帰って行った。

予定日が凜香と一日違いに成っていたのには流石の香里も顔を赤くして、同じ時に宿ったと確認をしたのだった。


六月に成って(良く聞こえるわね、凜香が母親で小菅健太がお父さんなのね、外の感じも判るわ、ぼんやり見える様な気がするわ)と美千代が声の区別が出来る様に成っていた。

香里は反対に悪阻に苦しめられて困っていた。

「凜香の時は何も無かったのに、今度は悪阻が凄いのよ、食べ物受け付けないわ」

「私は全然平気よ、凄く肥えてきたわ、私は女の子でお母さんは男の子だわ、間違い無いと小菅の母が言っていたわ」

「それより、家の工事始まったの?」

「来月から工事が始まるのよ、大きな家よ、五人は子供産めるわよ」

「えー、何故?」

「私が若いから、沢山産むだろうだって、顔が赤く成ったわ、妊娠が判ってから自粛しているのにね、お母さんもそうでしょう?」

「う、うん、まあ。」と曖昧な返事の香里。

まさか回数が増えているとは言えないのだった。

(でも娘のお腹の子供って叔母さんかな?神様はお腹の中から外が見えると言ったけれど、明かり以外は見えないよ、音は良く聞こえるよ、激しい声を聞かされて失神しているからな)と香里のお腹で考え込む勝弘。

(今、電話しているのは母親の香里だわね、香里のお腹に釜江さん居たら、どの様に話すのだろう?見えるのかな?お腹の中が見えるの?凄くない?)と美千代も考えている。

最近は以前に比べて眠る回数は減ったが、反対にお腹が直ぐに空く美千代は(豆腐を直ぐに食べたい)と要求する。

「大丈夫よ、冷や奴は予備があるからね」とお腹に向かって言う凜香は、豆腐を求めているのは子供だと決め付けていた。

何とか九月迄学校に行って、後期を休学してその後は子供を三人で、交代で面倒を見るから、卒業まで頑張って学校に行きなさいと言われている凜香だった。

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