第26話妊娠に気づく

   24-026

翌日凜香は近くの産婦人科に行く事に成って、香里が付き添いで一緒に行った。

妊娠検査薬では確実に妊娠が確定していたが、今後の心配も有ったから、今日行く事に数日前に決めたのだ。

小倉産婦人科は六十過ぎの女医さんで「最近の検査薬は正確ですからね」と笑いながら診察をしてから「若いから、元気な子供が産まれますよ」と凜香を喜ばせた。

香里が「私、実はまだ四十四歳なのですが、生理が無くなりまして、再婚が原因でしょうか?」

「四十四歳は少し早いですね、再婚されるとホルモンの分泌が良く成って、生理も順調に成ると思いますが、最近ですか?」

「はい、再婚して直ぐです」

「それは変ですね、それまでは規則正しい方ですか?」

「はい、それだけは自信が有ります」

「体調に変化は?」

「好みが変わりました、今まで嫌いな物が好きに成ったりしています。娘も同じで嫌いな物を食べる様に成りました」

「避妊されていますか?」

「いいえ、この年齢ですからしていません」

「お母さんも尿の検査をされた方が宜しいかも?」

「どう言う意味でしょう?」

「避妊されていないなら、妊娠の可能性が有りますからね」

「先生、冗談が。。。。」とは言ったが顔色が変わっていた香里だ。

凜香には何も話さずに、病院を出る二人。

「安心だわ、元気な子供が出来るのね」

「あ、ああーそうかも」ともう上の空の香里だ。

凜香と別れると早速薬局に飛び込む香里。

「娘が、彼氏と付き合って居るので気に成って」と気恥ずかしさも有って自分のだと言い難い香里。

この歳に成って、こんな物買うとは思わなかったわ、でもこれどの様に使うのかな?閉じたまま帰って説明書を読む、自分が凜香を産んだ時にはこの様な便利な物は無かったから初めての経験だ。

トイレに駆け込む香里、何度も何度も説明書を読み返して、間違いが無いのか確かめる。

最近では生理前にも反応が出る検査薬も有ると言われたが、流石に生理の時期は大きく過ぎていたので関係が無かった。

しばらくして「う、うそー、うそよね」と顔色が変わる香里。

「えー、どうしよう、困ったわ」と独り言を言いながら、再び異なる薬局に飛び込む香里。

一番正確だと薬剤師が言う物を買ってきて、再びトイレに駆け込むが尿が出ない。

緊張して今度は飲み物を次々飲む香里で、気分は焦って自分がこの歳で娘と同じ時期にお腹が大きく成る?と考えただけでも恥ずかしいと思っていた。

しばらくして、ようやくトイレで二度目の検査を調べる香里、両手を合わせて「妊娠していません様に」と目を閉じて祈って、ゆっくりと目を開くと「ああー、本当だったわ、大変だわ!」と何も手に就かない状況に成った。


いつの間にか夜に成っていたが、食事も何も作ってない状態、どうしようと考えるだけで時間が過ぎていた。

(おーい、お腹が空いたよ、何か食べよ~、辛子明太子で良いよ)とお腹の中で騒ぐ勝弘。

その要求に思い出した様に「あっ、食事だ!」と口走る香里。

「只今~~香里、帰ったよ」の泊の声、急に安心したのか「貴方――洋さんーー」と半分泣いて抱き着く香里。

「どうしたの?お腹が空いたよ、今夜は何かな?」と微笑む洋に「何も作ってないのよ」慌てる香里。

「どうして?凜香ちゃんの病院に付き添いに行って何か有ったのか?」と驚き顔に成る洋に「大変な事が起こったのよ」戸惑ってどの様に話すか迷う。

「えー、流産か?」と声が大きく成る洋だ。

「小菅が嘆くよ、今日も朝から子供の名前を考えるのだと五月蠅い位だったのに、流産は立ち直れないぞ」

「違うのよ、子供が出来たのよ」

「それは知っているよ」と言うと、香里が指を二本立てる。

「えーーー、おいおい、双子か?まだ二十歳にも成ってないのに、いきなり双子なのか?」と驚きの声が大きく成る洋。

「違うのよ、双子じゃないわよ」と言って自分の顔を指さす香里だ。

「何だ、娘に出来たから、香里も欲しいと言うのか?それは私も欲しいよ、歳はいってはいるが、自分の子供は欲しいよ、頑張ろう!」と嬉しそうに言うと、いきなり笑顔に成って抱き着いてくる香里。

「本当に子供欲しいの?」と耳元で囁く「そりゃあ、香里と僕の子供は欲しいよ」

「ほんと、ほんとに欲しいの?恥ずかしく無いの?子供と孫が同時に出来ても恥ずかしく無いの?」

「勿論だよ、孫より子供が遅く産まれるのが昔は沢山有ったのだよ」

「それほんとなの?じゃあ産んでも良いのね、そうなのね、取り消しは駄目よ」「勿論だよ、産めるなら産んで欲しいな」

「そう、安心したわ」と嬉しそうに満面の笑みに変わって「驚かないでよ」

「双子でも驚かないよ」

「違うのよ、凜香では無くて、私が妊娠したの」と嬉しそうに話すと「。。。。。。。。」泊は何も言わずに呆然としてしまった。

「ほら、これ見て」と検査の容器を見せる香里に、ようやく「ほんとうなの?」「本当よ」

「わーい、万歳、万歳」と両手をあげる泊、その瞳はうれし涙で滲んでいる。

(どうしたのだよ、今頃俺が居るのが判ったのか?兎に角お腹が減ったよーーー)

「それで、食事も作らないで悩んでいたのか?」

「娘と並んで出産なんて、恥ずかしいから」

「大丈夫だよ、心配しなくても良いよ、今夜はお寿司でも出前を頼もう」と嬉しい洋だった。


翌日警察署では小菅が「子供の名前って考えるのは楽しいですね」

「そうだな、俺も真剣に考えるよ」

「お父さんが?考えてくださるのですか?そうだ男と女を考え無いとまだ性別が判らないからな」

「はい、それが困ります」

「両方考えよう」

「昨日までまだ早いとおっしゃいませんでしたか?」

「うーん、そんな事言ったか?」

「はい、性別が判ってからでもゆっくり間に合うと言われましたよ」

「いやーそれは事情が違うからな」

「はあ?何が違うのですか?」

「そ、そのうちに。。。」と言葉を濁すが顔はにやけて、でれでれ状態の泊刑事なのだ。


(ようやく、俺がお腹に居るのが判った様だな、これからは自粛してよね、目が廻るからな)香里はテレビを見ながら、安心したのかお腹が空くのか、お菓子を食べ始める。

すると凜香が電話で「学校いつまで行こうかな?お腹が目立つ迄行くの?」と電話をかけてきて「ボリボリ」と音がするので「朝から何を食べているの?」

「だって、お腹が空くのよ、辛い物も良いけれど最近はお菓子が食べたく成るのよね」

「お母さん、おやつ食べるのが少なかったのにどうしたの?」

「お腹に子供が宿ると、好み変わるらしいわね、豆腐とかレモン嫌いだったのに?」

「私の場合は、子供が出来たからよ、仕方が無いわ」

「そうね、それじゃあ、私も同じかな?」

「えーーー」と驚きの声をあげる凜香だった。

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