第23話好みの変化

 24-023

勝弘は全くまだ何も判らない状態で(おい、まただよ、熱湯地獄だ、助けて!)と叫んでいた。

香里が食事もそこそこに、再び露天風呂が気に入って、もう一度入ったからだ。

十一時にチエックアウトで、兼六園に向かう予定。

一時間程で到着するので二時間程の見学、食事を終わって三時に出発すれば、夜には自宅に帰れる予定だ。

まだ時間は十時に成っていない充分時間は余裕が有ったのだ。

「香里さんは温泉好きですね」

「はい、大好きですわ、それに露天風呂が各部屋に有るから、楽よ!直ぐに入れるから」その話はもう勝弘は聞いては居ない。

再び居眠り状態に入って、初めは熱いのだが、気持ちが良くなると直ぐに眠たく成って眠ってしまうのだ。


この様に、二人は凜香と香里の体内に殆ど同じ時に蘇って命を復活させていた。

(画老君、二人共蘇ったでしょう?)

(ほんとうだ、中々高等技術だね、時間も正確だ)

(まだ酒飲みの方は判らない様だね)

(勘が悪いのだね、脳に酒が残っていたのかな?)

(まだまだ数日経過しないと、お母さんは子供に気が付かないよね)

(豆腐が好きに成った程度では判らないよね)

(これから、楽しみだね)と二人の神様の戦いが始まっていた。


四人は十一時過ぎに旅館を出て、兼六園に向かう。

北陸新幹線の開通で、沢山の観光客で駐車場を探すのも大変な状況。

今日は小春日和と云うより初夏の様な暑さで「これは、ビールでも飲まないとダメだな」と泊が言うと「僕は運転、彼女は未成年ですから、二人は飲んで下さい」と小菅が駐車場で車を駐車してから言う。

金沢の兼六園は江戸時代、加賀藩の庭園として造られたことに端を発する。

延宝4年に5代藩主前田綱紀が「蓮池れんちてい」を造り、その庭を「蓮池庭

れんちてい」と呼んだのが始まりとされている。

これは、蓮池門れんちもんを入った辺りであり、現在7つある門の中で正門とされている。当時は、金沢城の外郭として城に属していた。

13代藩主前田斉泰が現在のものにほぼ近い形にしたとされる。

「兼六園」の名称が定められたのもこの頃である。

とくに、小立野台地の先端部に位置していることから、園内に自然の高低差がある。

これによって、園路を登りつめていく際の幽邃な雰囲気と、高台にある霞ヶ池周辺の宏大さ、眼下の城下町の眺望を両立させている。

春夏秋冬それぞれに趣が深く、季節ごとに様々な表情を見せるが、特に雪に備えて行われる雪吊は冬の風物詩として情緒を添える。

霞ヶ池を渡る石橋を琴に見立てて徽軫

ことじをなぞらえた徽軫灯籠ことじとうろうは、兼六園を代表する景観となっている。

園内の噴水は、日本に現存する最も古い噴水であるといわれる。

これより高い位置にある園内の水源、霞ヶ池から石管で水を引き、水位の高低差だけを利用して、水を噴き上げさせている。

そのため、水が噴き上がる最高点は、ほぼ霞が池の水面の高さに相当する。

ポンプなどの動力は一切用いておらず、位置エネルギーのみを利用したものである。

長らく殿様の私庭として非公開であったが、1871年から日時を限っての公開が始まり、1874年5月7日から正式に一般公開された。こうして明治以降に構造物が付加されたことが、1922年名勝に指定されたものの、特別名勝に指定されない一因となっていたが、その後の上記施設の移転などの整理と整備により、1985年特別名勝に指定された。

四人は大勢の観光客に揉まれながら、見物をして「人に酔っちゃったわ、食事行きましょうか?」

「そうだな、一杯飲みたいよ」と泊が言って、兼六園を出て近くの料理屋を探して入って行く。

昼の時間を過ぎているので、料理屋は比較的空いているので「俺は生ビール、香里も生か?」

「はい」

「僕と、凜香はウーロン茶でお願いします」

「天ざるそばにするか、時間遅いから」

「そうですね、ご飯物は要らないですね」と小菅が言うと、凜香も頷く。

しばらくして生ビールが先に届いて「乾杯」

「乾杯、ごめんなさいね、小菅さん」と香里が遠慮しながら飲み出した。

「美味しいわ」

「暑いから最高だな」と一杯の生を半分程一気に飲み干す。

香里も一緒に成って飲むと(何、何、何だ~~、頭が変に成って来た)と今まで眠っていた勝弘が急に目覚めて騒ぎ出した。

(変だ、これは?何だ、幻覚が見える、これが地獄か?ああ-駄目だ、目が廻る、助けて。…)と言うと気絶をしてしまった。

美千代も(暑いわ、冷や奴食べたい)と叫ぶと「すみません、冷や奴有りますか?」急に凜香が口走った。

「どうしたの?凜香、豆腐嫌いだったでしょう?」と香里が飲みかけのビールをテーブルに置いて聞き直すと「急に食べたく成ったのよ」

「変ね、昨日から好みが変わったの?」

女に成ったから?私は、好みは変わってないわね、そうか?男が変わっただけだから?と意味不明の事を考えているが、何故か酔いが廻るのが早く感じて、天ざるそばが来た時にはそばが箸で掴めない程、目が廻っていた。

「お母さん、変よ?どうしたの?」

「いや、それが酔ったみたいで、変なのよ」

「大丈夫ですか?昨夜は沢山飲んでも平気だったのに?」と泊が気を使って香里の身体を支える様にしている。

冷や奴が届くと今度は凜香が、そばを食べるのを止めて「来ましたよ、来ましたよ」と言うと直ぐに食べてしまって「少ないわね、お代わり貰えますか?」と大きな声で注文をしたので、全員の目が点に成って呆れていた。

この二人の豹変の犯人がお腹の二人だとは、この時の二人に判る筈も無かった。

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