第22話蘇り
24-022
真夜中に成って(ここが地獄なのね、真っ暗ね)と美千代が目覚めた。
(暖かいのかな?地獄の感覚より天国の様に思うのだけれど、誰も居ないし、移動も出来ないから、動かずにここに居るだけか、それが地獄だわ)美千代はまだこの時、凜香の体内に居るとは思っていない。
一方失意の底で呆然としていた勝弘も異常を感じて(何、何だ-、消えるのか?)と言葉を残して公園から消えてしまった。
時間は真夜中の三時を過ぎていた。
食事をして、一眠りした泊が目覚めて、香里の身体を求めたのが真夜中「今頃、何をするの?」と言いながら一度蘇った身体は拒絶をしなかったので、再び結ばれた二人。
安芸津の計画通りの時間に、勝弘は香里の体内に宿る事に成っていた。
朝方に成って(これが地獄か、悪く無い感触だな)と勝弘はようやく目覚めた。
(地獄は生暖かいのか?叔母さんも地獄か、移動も何も出来ない様だな、いつまで続くのかな?)と感じながら眠ってしまう勝弘だった。
(何、えー地震なの?地獄に地震が?)といつの間にか眠っていた美千代が飛び起きた。
「凜香、好きだよ」
「健太、私も好きよ」
(何よ、これ?えー、止めてよ、悪酔いするわ、凜香?凜香?あれ?聞いた事有るわ、でも駄目揺れすぎる、ふー)
朝から愛し合う凜香と健太の行為に美千代は船酔いの様に成って、ふらふら状態でダウンした。
一方の勝弘は(何だ?釜ゆで地獄か?熱いな)と目を覚ましていた。
香里と泊が朝風呂に入っていたのだ。
「朝の風呂は気持ち良いわね」
「香里さん、明るい処で見ると肌が綺麗ですね」
「まあ、お世辞がお上手ね」
(何?香里?俺が罪に陥れたから、釜ゆで地獄に落としたのか?助けてくれ)しばらくして(意外と熱くないな?良い感じの温かさだ、おーいこれ位で許してくれよ、あの女も逮捕されなかったからな)と顔を上向けて叫ぶ勝弘、自分が香里の体内に居る事は全く考えてもいないのだ。
美千代はようやく気絶から目覚めて(お腹が空くわね?どうして?地獄の筈だったよね)と考えていると「健太さん、お腹空いたわね」と女性の声が聞こえる。
「朝食もう少し早く、予約して置いた方が良かったね」
「行こうか」と男性の声がして(何よ、熱い地獄の釜だ!助けてーー、私水泳は得意だけれど、熱いのは弱いのよ)と叫ぶ美千代。
しばらくして(良いわ、ありがとう、これなら我慢出来る、気持ち良いわ、また眠たく成るわ)と居眠りの美千代だ。
(おい、な何だ、助けてくれ、死にたくないーー、違うか、俺は死んでいたのか?これは何事だ、圧死するーーーー)泊と香里が再び愛し始めた振動が伝わる勝弘。
(何、止めろ!目眩がする、遊園地は不得意だ、ジエットコースターは乗らなかっただろう?地獄では現世で嫌いな物を与えるのか?止めて吐きそうだ)と言いながら意識を失う勝弘。
しばらくして美千代が目覚めて(何も見えないな、明かりが多少は判るかな?でもお腹が空いたよーー)
「健太さん、朝食はまだなの?」
「もうそろそろだ、行こうか?」
「早く行くとお邪魔かも?」
「そうだね、二人共長いご無沙汰だったからね」
「じゃあ、私はもっとよ」
「そうだったね」
(何の話が聞こえているの?地獄で再び過去の行いを見せるの?もう要らないわよ、それよりお腹が空いているのよ、地獄ってこんなにお腹空くの?おーい鬼さん!)
「早く行こう、本当にお腹空いて背中とくっつきそうよ」
「大袈裟だな」と笑いながら部屋を出る二人。
「もう時間だわ、来るわよ」と仮眠をしている泊を起こす香里、自分も慌てて下着を着けて鏡の方に行くと髪を梳かして、久々のSEXの名残を感じていた。
内線の電話で仲居が料理を運んで来ると、連絡をしてきた。
終わると同時に健太と凜香が「おはようございます」と清々しい顔で言った。
「よく眠れましたか?」
「う、うん」と曖昧な返事の泊だが、向こうの部屋から香里が「眠れたわよ、貴方達は?」と言いながら出て来た。
しばらくして机一杯に並んだ料理に「朝からこれだけ食べるの?」と驚く香里に凜香が「美味しそう、食べましょう」と既に箸を持って待っていた。
「お行儀の悪い子ね、お嫁に行けないわよ」と香里が言うと「もう行ったから、安心よ」と言って笑う。
四人の賑やかな食事が始まって、美千代が(美味しいわね、何の味?刺身、そうマグロの刺身よ、湯豆腐?これ私好きよ)と考えていると「湯豆腐が美味しいわ」と凜香が口走る。
「嘘、凜香!豆腐嫌いだったでしょう?」
「そう?好きよ」と言いながら食べる凜香姿に呆れる香里だった。
ようやく目覚める勝弘は、(まだ気分悪いよ)と思っていた。
「何だか、急に気分が悪くなって来たわ」と箸を置く香里。
「どうしたの?大丈夫?」と労りの言葉をかける泊。
「ありがとう、大丈夫よ!貴方は食べて下さい」
「お母さん達、本当の夫婦みたいね」と凜香が言うと「本当も嘘も無いですよ、もう夫婦ですから」と泊が嬉しそうに言って、香里はその姿を頼もしく思っていた。
「今から、兼六園に行く予定ですが?大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫よ!行きましょう」
食事を終わると、二人が部屋に帰る。
(待って、これって地獄ではないわね、この二人の声がいつも聞こえるわ、特にこの女の人の声は聞こえると言うよりも、自分が喋っている感じだな?もしかしてこの薄暗い世界は?お腹の中?)美千代はようやく自分が、生まれ変わって凜香のお腹の中に宿った子供なのでは?と考え始めていた。
でも何も見えない暗闇で、うっすらと明かりの方向は判るが、それ以外は全く何も無い世界に、まだ自信は持てない美千代なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます