第21話客室露天風呂

 24-021

(幽霊で遊んだけれど、叔母さん、星が見えてきたよ)

(そうね、もう誰も来ないわね、後何時間?)

(後五時間程で終わりだな)

(初めは幽霊も楽しかったけれど、虚しいわ、人の気持ちが判るとね)

(俺は、嫌われていたから、予想はしていたけれど、それでもショックは多かった、叔母さんは相当だっただろうな?)二人は日が暮れても同じ場所に居て動かない。

(画老童子!)と急に呼ぶ美千代。

(何?)

(少しの間だったけれど世話に成ったから、お礼を言わなければと来て貰ったのよ)

(そうか、生まれ変わったら頑張って違う生き方をして下さいよ、五日間が懸かっているからね)

(えー、まだ生まれ変わるの?それに五日間って何?)

(あー、それは知らなくても良いのよ、まあ兎に角頑張って、さよなら)

(さよなら)と言うと消えてしまった。

(俺は呼ぶ気にも成れないよ)と言う勝弘だ。


この二人とは対照的に、四人は楽しい旅を味わっていた。

東尋坊は日本海に突き出した柱状の断崖が1km余も続く奇観で、輝石安山岩の柱状 節理という地質学上にも珍しい奇岩。国の名勝・天然記念物に指定されており、断崖上 に荒磯遊歩道(約4km)が続いている。

昼過ぎに東尋坊に到着して、昼食を食べると泊と香里はビールを飲んで上機嫌に成っている。

「酔うと危ないですよ、岩場に行くのは?」と小菅が言うと「私達は行かないから、二人で楽しんで来て」と言う。

適当に散策をして「海から見るのが一番ですよ、遊覧船に乗りますよ」と誘いに行くと、今度は二人共一緒に行こうと乗り込んで来た。

夕方まで楽しんだ四人は、山中温泉に五時に到着した。

仲居が四人を部屋に案内をして「食事は、竹林の間の用意致します」と言うと泊と香里を竹林の間に案内をして、紅葉の間に小菅と凜香を別の仲居が案内をした。

「同じ造りの部屋が、階が異なりますのですみません」と一階と二階に別れて二組は泊まる事に成った。

香里は部屋に入ってから不思議な気分に成っていた。

何故?子供と同じ日に彼氏と泊まる事に成ったのだろう?その偶然と世の中にこの様な親子は多分居ないのでは?と思い出していた。

二人の神様に操られている矛盾も多少を感じていた香里だが、気持ちはもう押さえられない状況に成っている。

仲居が食事の時間を決めて部屋を出ると「凄い部屋ですね」

「ほんとうだ、小菅奮発したのだな」

「えー、小菅さんが出したのですか?」

「母親が出してくれた様だ」

「何故?」

「それは、香里さんが犯人に間違われて気苦労が多かったのと、娘さんを自分の子供の嫁に貰うからですよ」

「でも、悪いわ、この部屋を二つでしょう?」と言う間に泊が香里の口を塞いでいた。

久々のキスに燃える香里、付き合いはしていたが二人は今日まで何もしていなかった。

香里には去年足立と行ったラブホ以来のキスだった。

久々のキスは、香里の気持ちを大きく変えて、先程まで考えていた親子が同じ日には消えて、既に泊との生活を考えている。

今夜のSEXから、自分は泊の奥様に成るのだの意識が高まっていた。

「この部屋、露天風呂が付いていますね」とキスの後香里が言うから、誘っている様に聞こえて「入りますか?」と泊まりもその気に成ってしまう。


凜香と健太も素晴らしい部屋に感動して「まだ食事まで時間有るから、入ろうか?」と凜香を誘うと「私、男の人始めてなのね、緊張するわ」と身体を硬直させている。

「大丈夫だよ、僕達結婚するのだから、安心して」と優しく話す健太。

キスをしても身体が震える凜香、その初々しさに健太は興奮しているのが自分で判った。

親子揃って、露天風呂で男性と身体を合わせていた。

「綺麗な身体ですね」

「恥ずかしいですわ」と泊まりに言われて恥ずかしい香里も久々の男性を感じていた。

一方の凜香も健太の腕の中で、湯船に浸かってようやく落ち着いていた。

始めて見る男性の肉体に、興味と不安が有ったのだが、健太の優しさに徐々に安堵の表情に変わっていた。


公園では(すっかり、暗く成ったわね、後何時間?)

(そんなに、時間は進んでない)

(あの四人ってどうなったの?)

(誰?)

(刑事二人と香里親子)

(知らない、興味も無いわ)

(そうだな、俺達には関係無いね)

(時間通りに消えるのかな?)

(多分そうじゃないの?)

(お別れだな)と言った時(何か変よ、消えるわ)と美千代が口走る。

(まだ、時間有るのに)と勝弘が言うが(だめーよ)と言う言葉と一緒に反応が無くなった美千代。

(おーい!何処に行った?)と一人に成った勝弘が呼びかけるが反応が無い。

(まだ、七時に成ってないな、安芸津!)と呼ぶがこちらも反応が無い。

(俺一人か?)急に寂しくなる勝弘。

(俺も早く、地獄でも良いから連れて行ってくれーーー)と叫ぶが何も反応が無い。


七時過ぎ、竹林の間に健太と凜香が手を繋いでやって来た。

「健太さん、お腹空いたわ」

「僕もだよ!大丈夫?」

「ええ、少し痛かったけれど、嬉しかったわ」と言いながら「こんばんは」と部屋に入ると「風呂入ったのか?」と泊が照れくさそうに二人に言った。

「はい、良いお湯でした」と嬉しそうに言う健太に、目で合図をする泊。

お互いの目が笑っていたので、二人はお互いが安心したのだ。

香里がしばらくして浴衣の襟を直しながら、奥の部屋から出て来て「お腹空いたわね」と言うが、凜香と目を合わせない、お互い恥ずかしい心境だったのだ。

直ぐに仲居が料理を運んで来て、四人の宴会が始まって、三時間飲み食いが行われて、四人の話は大いに盛り上がって、誤認逮捕の話に成って香里が「思い出しても嫌よ」と怒ると、その誤認逮捕で四人が結ばれたと凜香が嬉しそうに話すと複雑な香里だった。



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