第18話夢を語る幽霊

  24-018

「こんな場所で言う事ではないわよ、凜香!」と凜香を窘める香里。

「私は健太さんと直ぐにでも結婚したいの、だからお母さんが心配なのよ」「えーー、少し一緒に居ただけでしょう?何故結婚なの?」と次々と話す凜香に呆れる香里。

「泊さん、お母さんの事好きでしょう?」

「えー、何、何を言うのよ」と驚く香里に対して「はい、私は戸崎さんの事は好きです」と間髪を入れずに答える泊だ。

「ほら、好きだと。。。」

「えー、私も好きですわ」と今度は香里が変な事を言い出す。

(えー、どうなっているの?)と遅れてやって来た美千代が驚いて見ている。

(美千代さんも、足跡を見に行って下さい)と画老童子の声。

(私も行くの?)

(はい、反省点を考える時間が必要ですから、いってらっしゃい)と言われるとファミレスから美千代も消えてしまった。


ファミレスのテーブルの三人は、自分の心の中に有る気持ちが、次々と口から出て来て混乱をしていた。

だが、本心だったから否定は出来ない状態で「何か変な会話に成ったけれど、私は健太さんが好きよ」

「でも、結婚は早いでしょう?」と香里が言う。

「待っていたら、お母さんの子供に負けるじゃない」

「はあーー、今何を言ったの?」

「早く産まないと限界が来るでしょう?」

「チョット、何を話しているのよ」と言う香里の前で今度は泊が「子供が二十歳で僕は七十三歳か」と口走る。

「えー、私が泊さんと直ぐに結婚して子供を産むの?」と驚く香里に「いけませんか?」と真面目な顔で見る泊。

二人の神様に悪戯をされている事も知らずに、勝手に結婚させられようとしている親子だった。

(親子だから、近いね)

(対決も良く見える)

(この三人本当に好きなのか?)

(悪くは思ってないから、良いのでは?)

(一人は若すぎ、一人は歳行き過ぎだよ)

(でも、適当な人が居なかったのよ、これまでの生活の中で近くて、お互いが見られる範囲がね)

(娘の方が叔母さんか?)

(おっさんがこの叔母さんだね)

(反省して帰って来たら、直ぐに妊娠だな)

(そうだな、早く式を用意しなくては)三人の思いもしない会話の中での食事が終わって、気まずい状況で車に乗り込む三人。

泊が自宅に到着すると同時に「先程の話は本気ですから考えて下さい、香里さんの事大事にしますから、お願いします」と言って別れた。

車が走り去ると「お母さん、あの刑事さん本気よ、考えたら?」

「それより貴女は?大学行かないの?」

「行くわ、結婚しても行けるわ」

「小菅さんの家は大金持ちよ、釣り合わないわ」

「ほんとうなの?」

「そうよ、あのお爺さんがマンションとか、駐車場を沢山持たれているのよ」「へー、じゃあ運が向いてきたのね、私達に」

(その通りだよ、真面目に正しい事をしているからね、あの悪餓鬼共の話は知っているから、安心じゃよ!)と二人の会話を聞いている天使様だった。


翌日取り調べで美雪もその時の状況を話て、白井ゆみも千登勢に頼まれて一芝居したと自供した。

森永親子の取り調べが数日で統べて終わって、泊刑事が香里に「訴えますか?」と尋ねて来た。

泊はあの森永のお陰で私達は知り合う事が出来ましたと付け加えたので、香里は親子揃って森永のお陰で良い人に巡り会えたと思って訴えをしなかった。

画老童子と安芸津童子の悪戯で、四人は親密な交際に進んで行くのだから、神様の力は時には信じられない出来事を作る。


毎日の様に電話をしてくる泊刑事、捜査の報告を元にして全く異なる話に進む。

昼間には遂にホームセンターに来るから、流石の香里も困り果てるが、休憩時間を調べて食事に誘うから、弁当の持参を止める香里も喜んでいたのかも知れない。

眞一と別れてから、足立と暫くの間付き合ったが、ラブホに一度行っただけで、その後は全く男性の影は無かった。

勿論泊は足立との付き合いも知っているので隠す必要も無いので、精神的には香里は楽だった。

凜香もバイトの書店に働きだすと、健太が何度も店に来てこちらも休憩時間に合わせて食事に誘う。

戸崎親子の夜の会話は、毎日の様に今日の泊刑事と小菅刑事の話、来ない日は事件が発生か?と心配する二人の会話。

お互い彼氏が刑事だから、危険な事件が起こる事が一番困るのだ。


四十九日の日にちが過ぎる事は絶対に起こらない。

予定では一日違いで美千代と、勝弘は蘇るから、この二人がその時間に妊娠する事は決められた出来事なのだ。

翌日泊が予想もしていない事を香里に口走っていた。

「みんなはこれから家族だから、一緒に旅行に行きませんか?」

「えー旅行に?それも四人で行くのですか?」と驚きの香里。

「家族に成るから、当然でしょう?」

「あの二人はまだ若いですよ、それに娘は大学に来月から行くのですよ」

「だから、卒業旅行と家族旅行を兼ねて行くのですよ」

「四人で泊まるの?」

「駄目ですよ、部屋は別で予約します」考えてもいないのに、次々と言葉が飛び出してくるのに、困りながら話す泊刑事だ。

「泊さん大胆な事を平気で言われるから、恥ずかしいわ」と香里が話している頃、小菅も全く同じ事を凜香に話して「お母さんと四人で旅行?」

「部屋は別ですよ」

「えー、それって。。。」と顔を赤くして聞いているが、行きたい気持ちに成るので驚く凜香。


数日後三月の彼岸の連休に、切符が買えたと泊と健太が一緒に家にやって来る。

「二人で相談したの?」

「この小菅が連休休みたいと、言うので話をすると、自分と同じ事を考えていたので、一緒に切符を買いに行きました」と嬉しそうな泊の横から「凜香さん、北陸の山中温泉ですよ」とカタログを見せる小菅。

(どうしたの?)

(この四人変な感じに成っているわ)

(三週間、自分の人生を見に行って来たら、大変な変わり様だ)と二人の幽霊は四人の交際に驚き顔。

(でも、馬鹿な人生だったな、今度は勉強をして学者を目指すよ)

(私は、デザインの勉強をするのよ)と人生の縮図を三週間で見てきた二人の幽霊、香里達の幸せそうな姿を見て、安心して自分の子供を見に向かった。

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