第17話恐い口

 24-017

(叔母さんも付いて来るの?)

(良いじゃない、貴方が珍しく中年の叔母さんについて行くから不思議でね)

(高校生も良いけれど、この女も興味有るのだよ、このおっさんも!)

(刑事だろう?誤認逮捕したから、親切に家まで送っているのよ)

(そうなのか?何か違う様な気がする)

(何が?)

幽霊を乗せて、ボロアパートに向かう車と交代に、森永親子が警察に送られたのは一時間後だった。

「子供の部屋には同じ様な感じの絵が沢山有りました」と嬉しそうに言う小菅刑事。

「今回はお手柄だったな」と課長に褒められて舞い上がる小菅刑事だ。

「お母さんは?」と香里の事を無意識で呼んでしまった小菅に「お前の母親は来てないが?」

「あっ、その戸崎さんです」

「何故?戸崎さんがお母さんなのだ?」

「それが、その」返事に困る。

「おい、お前の手柄には何か裏が有るな」と須賀刑事が笑いながら言う。

この時点で小菅健太が戸崎香里の娘が好きだと署内で、知らない者は居なく成ってしまった。

「まあ、良いじゃないか、人を好きに成った結果が、事件の解決に繋がるお手柄をしたのだから、褒めてやろう」と課長の一言で、拍手が巻き起こった。


取り調べで森永千登勢は、日頃から香里の事を毛嫌いしていたと証言した。

駐輪場の事で一度言い争いに成ったので、嫌いに成ったと答えた。

スナック(夢)のママの突然の死で、閉店に成ってもう合わないと気分が良く成っていた時に、美雪ママから、転落事故の話を聞いて自宅に帰って子供に話すと、話が大きく成って面白く成って、あの女が店に出られないと開店にも困るから邪魔をする気も有ったと話した。

娘の千晶は警察に聞かれた時、大袈裟に話してしまったので、話を作る事を母親と考えたと自供した。

明日三枝美雪と、白石ゆみも警察に呼ばれる事に成って今夜の取り調べは終わった。

二人は警察にお泊まり頂く事に成っていた。


自宅に送った泊刑事は香里が娘に連絡をして迎えに行くと言うので、一緒に小菅の自宅迄行く事に成った。

この時まだ小菅の自宅に娘が居る事を泊刑事は知らなかった。

同じ名前の家だと思っていた。

(この刑事、少し親切過ぎなのでは?)

(そう思う?)

(思う、思う)と二人の幽霊が車の中で話す。

(実は、気が有るのですよ)

(わー、驚いた)

(安芸津童子さん?)

(急に話に割り込まないで下さい)

(いいえ、とても大事な事ですからね、釜江さんはこれから少し修行に行って貰いますので、二人の仲良し幽霊はこれで終わりです)

(えー、何処に行くのだよ)

(自分がこれまで生きて来た足跡を見に行くのですよ、生まれ変わるに際して反省をして貰う為にね)

(いいよ、今更赤ん坊に戻るのか?)

(いえいえ、学生時代から、早送りで体験してきて下さい、では!いってらっしゃい!)と言うと安芸津童子と一緒に釜江勝弘は車の中から消えてしまった。

(あっ、忘れていました、彼は過去に行きましたから、呼んでも来ませんよ、今の時代まで体験が終わると戻って来ますからね)と安芸津童子が伝えて消えた。

自分には、その体験は無いのかな?と思っているとしばらくして車は小菅の自宅に到着して、自宅に入ると恭子が出迎えたので驚く香里。

「主任さんの自宅ですか?」

「はい、お疲れでしたね、疑いが晴れて良かった」と話していると、凜香が「お母さん、お帰り」と言うと抱き着いて涙で二人は抱き会う。

説明を聞いて事情が判った香里が「主任さん親切にして頂きありがとうございました」

「刑事さんは車?」

「はい、待っていると、そこの空き地に」

「お茶でも飲んで貰おうかと、用意していましたのよ」

「そんな気を使って頂かなくても」

「刑事さんには息子も世話に成っていますから」と恭子が言う。

すると祖父母の二人が顔を出して「良かったですね」

「お母さん、おじちゃんとお婆ちゃんに大変世話に成ったのよ」と紹介すると香里は深々とお礼のお辞儀をして「また、後日お礼に参ります」と言った。

「孫の健太が、お嬢さんに惚れている様で、今後ともよろしくお願いします」と反対に言われて香里が「凜香、本当なの?」と尋ねると嬉しそうに頷く凜香。

上がってお茶でもと言うのを振り切って香里と凜香は小菅家を後にして、車に向かって行った。

車に乗る二人に「誤認逮捕で迷惑をかけたね、このとおりだ」とお辞儀をする泊刑事。

すると「この小菅の息子さんのお手柄だったのでしょう?」と言われて「えー、ここは小菅の実家だったのか?」と初めて気づく泊刑事。

泊は二人に「お腹減っているでしょう、食事に行きましょう」

「えー、もう遅いですから、私は帰ってラーメンでも食べますから」

「私も、もうお腹が減って背中につきそうです」と言う泊刑事は誘おうと強引だ。

「奥さんがお待ちでしょう?」

「こんな不規則な仕事だから、とっくの昔に逃げられましたよ、今は母親と二人ですが、その母も去年から老人ホームです、痴呆が進んで私が行っても判らない時が多いのです」話をしながら車はファミレスに入って停まった。

テーブルに着いて注文が終わると香里はトイレに向かう、自分の顔はとんでもない状態だと初めて気に成ったのだ。

口紅を塗って髪を纏めて戻って来ると、凜香は小菅の話を面白可笑しく泊に語っていた。

テーブルに料理が運ばれて来て香里が「刑事さん子供さんは?」と尋ねると「刑事さんは止めて下さい、子供は居ません一度出来たのですが流産で、それが離婚の引き金に成りました」と寂しそうに話す。

「子供さん、欲しかったでしょう?」

「はい、それは欲しかったですね」としみじみと語る泊。

「けいじ。。。いえ泊さん、再婚はされないのですか?」と急に凜香が尋ねる。

「五十代半ばの男に来てくれる方は居ませんよ」と微笑む泊だが凜香の次の一言はその場の空気を変えてしまった。

「お母さんも再婚すれば良いのに」話した凜香が自分で何を話してしまったのか?と驚いていた。

言葉が口から勝手に出たのだ。

「日頃から、四十五歳迄なら子供は産めると話していたじゃない?」

「凜香何を言い出すの?」と顔を真っ赤にしている香里。

「私、あの何。。あれ?」と自分が勝手に喋り出しているのに驚きの表情に成る凜香。

「私も結婚するから、お母さんも再婚すれば良いわ、ねえ泊さんお母さんを貰ってあげて下さい」と言い出す凜香に驚きの香里が「何と言う事を言うの?凜香おかしいわ?変よ」と香里が困り果てて言うと、食べるのも忘れて呆然と聞く泊。

「だって。。。勝ってに。。。。。いやーーどうしよう」と今度は困り果てる凜香だった。


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