第15話頼まれた偽証

24-015

誰だろう?凜香のお母さんを犯人にしたのは?小菅刑事はスナックビルの現場に来ていた。

三階のスナック(夢)の前は花が飾られて開店初日の様だ。

見ていると隣のスナックから、女性が少し扉を開けて見ているので、.小菅が視線を向けると慌てて戸を閉める。

結構ライバル心有るのだろうか?警察を隠して入ってみようと(夢)に入ると殆ど満席状態で「いらっしゃい」と中年の叔母さんがカウンターの前からおしぼりを渡す。

見渡しても若い女性は皆無、全員三十代後半から五十歳、自分から見ればお母さんに近い。

「初めてね」と今度は異なる女性が来て名刺を差し出す。

「伸子です、よろしく」と挨拶をして飲み物の注文を尋ねる。

「ビールをお願いします」と言うと「江美さん、カウンタービールのセットお願いね」と奥に言う。

確かこの前の店には居なかったと考えていると、前にやって来たのは貫禄のボディの女性、この中では若い方だろう?

「君、前は居なかったよね」と尋ねると「今日からです、前から入らしていたの?」と尋ねる江美。

「紹介するわ、一番向こうの細い人が萌さん、次がママの伸子さん、奥のテーブルが愛さん、その隣が成美さんよ、本当はもう一人香里さんが居るのだけれど、今夜は用事で入ってないのよ」

「はい、香里さんは知っています、お嬢さんも!」笑顔で言った。

「えー娘さんがいるの?」

「はい可愛いですよ」と話していると伸子が来て「ママ、このお客さん香里さんの娘さんと知り合いらしわ」

「えー、私も殆ど会った事無いのよ、確か高校生よね」

「もうすぐ大学生です」

「香里さんに似ていたら、可愛いでしょう?」

「はい、可愛いです」と言うと「恋人?」と小声で尋ねる伸子。

照れ笑いの小菅健太に「貴方も二枚目よね」笑顔で言った。

「小菅と言います、よろしくお願いします」と言うと「小菅、小菅」と言い始めて何かを思い出そうとする伸子。

「私も知っている人に小菅さんってお爺さんいますよ!」

「そうですか?少ない名前ですがね」と言うと「そうよ、少ないわよね、大金持ちのお爺さんよ、マンションとか駐車場を沢山持って居るのよ」

「えー」と驚く健太に「確か庄ちゃんって、呼んでいたわ」

「それ、お爺さんですよ」と健太が言うと今度は伸子が驚いて「貴方庄ちゃんのお孫さん?」

「はい」

「奇遇ね、世の中は狭いわ」とビールを注ぐ伸子。

この店にも昔は何度か来たらしい、伸子が昼間働いていた喫茶店によく行っていたのだと判った。

店の中に可愛いイラストで、店のシステムと催し等が描かれているので「あれは誰が?上手ですね」と伸子に尋ねると「今度新しく入った、萌さんが描いたのよ、今までこの店ではあの様な掲示は出来なかったのよ、上手でしょう」と笑った。

小菅は不思議に思った凜香の母親はもの凄く上手に絵を描くのに?伸子は知らないのだろうか?そう思いながらしばらく探りを入れる話をしてみたが、絵を描けるとは思えない話のみで小菅は不審を抱いて自宅に帰って、凜香にお母さんが絵を描けるのか訪ねて見ると、とても見られる絵は描けないと話した。


翌日小菅刑事が思った事は、あの写真の絵を描いたと云う白井ゆみの絵を眺めていた。

「どうした、小菅」と泊刑事が尋ねると「この絵上手でしょう?素人の絵には見えないと思うのですが?」

「まあ、上手だけれどな」と言うと須賀と取り調べ室に向かう。

「泊さん、僕病院に行っても良いですか?」

「どうした?」

「頭が絶えず痛くて、質問する度に頭を叩かれている様な気分がするのですよ」

「そうか、先日から続いているから、行って来い」と須賀刑事は首を傾げながら、出て行く。

(叩き過ぎたか?)

(そうかもね)と美千代と勝弘が楽しそうに話す。

「戸崎さんも絵が上手だが、何処かで勉強されたのですか?」

(あたぼうよ!芸術大だ)

(貴方に聞いていないわ)

「私、絵なんて描けません」

「昨日須賀の絵描いていた、それも上手だった」

「それが判らないのです、手が自然に動いてしまったのです」

「成る程、釜江さんを突き飛ばした時も手が勝手に動いた?」

「違います!」と化粧の落ちた顔、乱れた栗色の髪で訴えて、疲れが見える香里。

(この刑事の方が少し良いわね)

(あの若いのは嫌いだ)

(もう一人の若い刑事は味方だわ)

(娘が好きみたいだ)と二人の幽霊は香里の側を離れない。

何とか守って無実の罪で警察に構想されている香里を、助けたいと見守っているのだ。


小菅刑事は大橋を伴って、今日も目撃者捜しに向かう。

白井ゆみの自宅に行って、聞きたい事が有ると言ながら大橋を伴って、マンションに向かうと「刑事さん、今何時だと思っているの!」と怒るが時間はお昼前だ。

「すみません、お聞きしたい事が」

「何よ、総て話したわよ」

「いえ、店に勤めている方の住所か連絡先をお聞きしたくて」

「馬鹿な事を聞きに来たのね、私一人で営業しているのよ」と茶色の髪を掻き上げて言うと「もう良いわね」そう言うと扉を閉めるゆみ。

「どうして、あの様な事を聞きに?」と大橋が尋ねると「本当にあの人があの絵を描いたのかと思って?」

「そうね、あの絵は勉強した人の絵よ、私の友人も昔勉強していたから判るわ」と大橋が言った。

「経歴調べれば判るのか?」

「多分」

「よし、調べよう」

「命じられた事と違う事すると、先輩に叱られるわよ」

「僕は、あの絵と証言は嘘だと思っているのだよ」

「それ、どう言う事?」

「誰かに頼まれて、嘘の証言をしたと思う」

「えー、それって何の為?」

「判らないけれど、僕はり。。戸崎さんが犯人とは思えない」

「私もあの叔母さんが犯人には見えないけれど、誰が陥れる必要が有るのでしょうね」と話ながら白井ゆみを知る人を捜しながら情報を聞いて、近所の家、店の近くの飲食店と夜迄続いて「小菅君、熱心ね」と大橋が疲れた様子で腕時計を見て、時計は六時を過ぎていた。

「夕食ご馳走します」と白井ゆみの店の近くの居酒屋に入る二人。

携帯の絵を店の人に見せて「こんな絵を描く人しりませんか?この絵を見た事有りませんか?」と尋ねる小菅に「上手な絵ですね」と店員の女性が言うと「そこのスナックゆみのママが描いたのだよ」と言うと「嘘!絶対に違う」言い切る。

「何故?」

「以前ゴルフコンペの募集を、店の客に出すのだけれど、誰かに描いて貰える人探していたから」

「えー」と大橋が驚きの声をあげた。

「ありがとう」と店員に言うと「小菅君の予想的中だわね」と大橋が嬉しそうに言った。

「これで、僕の推理が実証出来た」と焼き魚定食を食べる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る