第14話急接近の二人
24-014
母の実家は四国の愛媛で既に両親は亡くなって、殆ど行く事が無く成っているので、凜香には身を寄せる処が無かった。
それを香里が荷物を持ってきた小菅に伝えて、自分の事よりも子供凜香を心配していた。
「判りました、自分が責任を持って、ガードします」と話して香里を安心させていた。
側に居る美千代が(この刑事、娘に気が有るのか?)と見ている。
(それなら安心だ、あのボロアパートで一人は心配だったからね)
(可愛いから虫が付くな)
(貴方の様な虫では無いから、大丈夫よ)と勝弘に言う。
(先程の刑事って、良い子みたいだね)
(今来た刑事は悪い子だな)と頭を叩くと美千代が同じ様に叩くと「痛い!」と頭を触る須賀刑事。
「この絵見ても認めないの?」
「そんなの誰でも絵の上手な人なら描けますよ」
「じゃあ、お前が描いてみるか?待っていろ」と紙を取りに行く須賀。
しばらくして紙を持って入って来る(いじめだな)と、勝弘が再び頭を叩くと美千代が叩く。
「痛い!、悪いのかな?」と口走って左手で頭を触りながら紙を香里の前に置く。
「書いてみろ」
「例え話です、私が書けるとは行っていません」
「まあ、試しに何か書いてみれば、俺でも良い」鉛筆を手渡されて紙に向かうが、香里が絵は描けないのを自分で知っていた。
すると紙に、須賀の姿が書かれていくと「えー、これは」と驚く香里の鉛筆の先が勝手に鬼の様な須賀の顔を綺麗に描き上げていった。
(釜江さん上手ね)
(これでも美大出身だ)
香里の手に釜江と美千代の手が重なって、恐ろしい程の絵が出来上がった。
「何、俺が鬼なのか?」と絵を見て驚く須賀刑事、描いた香里がもっと驚いていた。
(面白いわね)
(そうだな、二人なら幽霊に成って、悪戯出来るのだな!頭を叩いたり、電気を操作したり、他にも何か出来るのかな?)
(もう少し何か描いてみよう)でも今度は鉛筆を持つ事も出来ない。
(持てないな、誰かが持っていれば出来るのかな?)
(判らないわ)と二人の幽霊は半分楽しんで遊んでいる。
自分の絵を持って取り調べ室を出る須賀「これ見て下さい」
「おお、上手に描けているな、須賀が鬼か?」
「あの戸崎が描いたのですよ」
「上手だな」と泊刑事が言って「あの絵描いたママも上手だ、今日は探せなかったが、明日からその携帯の写真を他に見た人が居るか聞こう」
「それとその女も探してくれ」その夜香里は警察に泊められてしまった。
側には美千代が(どうしたら良いかな?困ったな、釜江さん貴方が自首しなさいよ)
(叔母さん、俺が死んだのに何故自首出来るのだよ!)
(でも、あの絵も写真も変ね)
(始めから、香里さんが犯人にされているよ!)
(誰が得するのよ、香里を犯人にして)と怒る美千代。
(香里が店に出られなかったら、もう一人確実に足らないわ)と美千代が言うのと同じく伸子が愛に電話で香里が逮捕されていると教えて、知り合いを捜して欲しいと頼んでいた。
驚く愛だが、明日から再営業の予定だから緊急に人が必要なのだ。
夜遅く成って凜香のボロアパートの下に着た小菅健太刑事、声をかけるべきか悩んでいた。
部屋の側まで行くと、大きな声で誰かと話しているのが聞こえる。
「もう、いいわ!お別れね」と聞こえる。
その後大きな泣き声が聞こえだして、思わずブザーを鳴らす小菅。
小菅を確かめて、扉を開くと同時に凜香が小菅に抱き着いてキスを求めて来た。
驚く小菅だったが、その唇を受け止めていた。
しばらくして泣くのを止める凜香が「彼が犯罪者の娘とは付き合わないと、電話してきたの」と半分泣きながら話した。
「まだ決まってはいないよ、重要参考人だ!」
「でも世間では逮捕されたと噂が、学校にも流れて加東君も知ったの、だから絶交に成ったのよ」と言うと再び泣き出す凜香。
香里から聞いている小菅は、夕食も食べていない様子の凜香を自宅に誘った。
自分の家の隣が祖父母の家だから、そこなら安心だから、祖父母も二人だけで退屈しているから丁度良いと話した。
バイトの本屋まで近いから、お母さんが戻るまで住めば、自分も安心して仕事が出来ると思っていた。
キスをして落ち着いたのか、凜香は小菅の申し出を受け入れて荷物を纏めだした。
小菅がお母さんに自分が頼まれたと話した事も、安心の材料に成った様だ。
祖父母に事前に、もしかしたら若い女の子を連れて帰るから、頼みますと話していた健太。
勿論恭子にも連絡をしていたので、準備は整っていた。
自宅に到着すると時計は十時前、祖父母と恭子を紹介して恭子が食事をテーブルに並べて「二人共、まだでしょう?」と言う。
健太と凜香は急に空腹を感じて「遠慮なく頂きます」と食べ始める。
母親の事を誰も聞こうとはしない、気を使っていたのだ。
健太も凜香とキスをしたので、お互いの意志が通じていると喜んでいたので機嫌が非常に良い。
祖父母の家に凜香が行くと母が「あの子の事好きなのね」と笑顔で尋ねた。
「そうだよ、好きだ」と隠さない健太、恭子も母親の香里が殺人を起こす人間では無いと信じていたから「早く無実を証明してあげなさい」と応援をした。
美千代と勝弘は、香里の側で話を一晩中していた。
幽霊は眠らないから、その香里も一睡も出来ないのか、何を考えているのか寝てない。
翌日から若い女性の目撃者と、写真を見た人の捜査に重点が絞られた。
昼間は香里の取り調べが続くが新しい話は出て来ない。
画老童子と安芸津童子は(どう?これで僕の思惑通りに成ったでしょう?)
(僕も決めなければ、始まらないよね、誰にするかな?)
(近くで見える範囲だと、結構面白いよ)
(そうね、双子は?)
(双子か、男と女?)
(喧嘩するか?)
(お腹の中で喧嘩するよ)
(じゃあ、あの人にしよう)と指を指す。
(妊娠出来るの?)
(大丈夫、私はその道の神様なるぞ)
(そうだった、安芸津は得意だね)
(旦那様は?)
(これから考える)
(でも面白いな、双子以上に楽しみ深い)と笑う二人の神様。
だがその二人の行動は天使様に見られていたのを、二人は全く知らないのだった。
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