第13話作られた犯罪

 24-013

白井ゆみの書いた絵を持って、スナックを出ると須賀刑事が「これで決まりですね」と嬉しそうに言う。

泊は「この写真を見せた二十代の女性が誰で、何処にいるのか調べる必要が有るな」

「もう一度引っ張りましょうか?」

「そうだな、事情を聞かなければ成らないだろう」

「上手に絵を描くな、あのママ」

「本当ですね、プロですね」

「あの店はもう開店しているのか?」

「そこですよ、見に行きましょうか?」とエレベーターに乗って三階に来る二人、丁度スナック(梓)の森永が外に出て客を見送りに来ていた。

軽く会釈の森永、客を送ると慌てて戻って「あれ?刑事は?」

「来なかったわよ」と美雪が言うと「変ね、来ると思ったのだけれどね」と言いながら客の相手に向かった。

泊達は丁度片付けの最中のスナック(夢)に入って伸子に香里と勝弘の事を尋ねていた。

「先程まで、香里ちゃん居たのですよ」

「その方は?」

「今度の開店から手伝って貰う、女の子です」少し四十代後半の女性が掃除をしていた。

「片桐萌さん、こちらは刑事さんですよ」と言うと会釈を遠くからする萌。

白井ゆみに聞いた特徴を話して、二十代の女性を尋ねたが全く判らないと言う伸子。

「庇っていますかね?」

「それはないだろう」二人は帰って行った。


泊の報告とイラスト画を見た捜査課長は、戸崎香里を呼んで自白させろと言い出した。

小菅は困った顔をしたが、新人で捜査方針に文句は言えないので我慢をする。

翌日、ホームセンターに警察が急行して、戸崎香里はパトカーに乗せられて連行された。

もう勤め先の店では大騒ぎに成って、従業員が口々に殺人犯らしいわよと噂話に成っていた。

店長から直ぐに本店の人事に連絡が届いて、小菅恭子の耳に入る。

恭子は直ぐに息子に電話で確かめる周到さ、健太は凜香の手前警察の勇み足で犯人では無いと言い切ると、恭子も「あの人はそんな人ではないと思うわ」と言って理解を示した。

健太は凜香に伝えなければいけないのか?と迷っていた。

だが中々携帯のボタンが押せないのだが、夕方に成って凜香の耳に児玉が、お母さん警察に連れて行かれたよ、知っているの?と連絡をしてきた。

時々自宅にも来るから、よく知っていた児玉は凜香が心配に成って教えてくれたのだ。

直ぐさま電話をする凜香は「お母さんが、警察に居るの?」と小菅に尋ねる凜香に驚きの声で「そうだ、今取り調べ中だ」

「何故教えてくれなかったの?母が何をしたの?何故捕まったの?罪は重いの?」矢継ぎ早に出る質問に答えられない健太。

電話を終わっても放心状態の健太に「着替えとか家に行って、貰って来い」と須賀刑事に言われる小菅。

何故?自分がと思ったが命令で仕方無く、自宅に向かう小菅刑事。


自宅で明かりも灯さずに呆然としている凜香は、大学に行くとかの問題では無い、明日からの生活が困ると考え込む凜香だ。

チャイムの音に急に我に返ると、古ぼけた扉を覗く「あっ」と言うと扉を開くといきなり土下座をする小菅刑事。

「すみません、連絡するべきか悩んだのですが、出来ませんでした、許して下さい」その行動に驚きの表情に成る凜香。

「そこまで、しなくても母が何をしたの?何の容疑?」

「。…..」そう聞かれても直ぐには答えられない小菅。

「教えてよ、交通事故ではないから、何か盗む?母はそんな事はしない、警察に捕まる事するはず無い。。。。。。。何なの?」

「。。。。。。」無言の小菅。

「何故、黙っているの?」と聞くと「あの、殺人です。。。。」とぼそっと言う小菅。

唖然とする凜香だが急に「ハハハ。..」と笑い出した。

驚く小菅を見て「母はゴキブリも殺せませんよ、冗談でしょう?」作り笑いで言った。

「。。。。。。」

「嘘よね。。。」

「。。。。」

「嘘よね。。。。」と小菅の身体を持って何度も聞き直す。

何も答えられない小菅健太。

しばらくして「僕もお母さんは絶対に犯人では無いと思います」と言い切る。

「ありがとう。。。」と言う瞳に涙が溢れて溢れ落ちた。

いつの間にか小菅は凜香を抱きしめて「僕がお母さんの無実を証明するから、安心して」そう言う小菅は落ち着いた凜香に事件の内容を話した。

今夜は帰れないから、着替えと必要な物を取りに来たと説明して、凜香が鞄に纏めるのを待っていた。

そしてもしも長引きそうなら、ここに一人は大変だろう僕のお爺さんの処に来れば良いよと伝えて鞄を持って帰ろうとすると、凜香が「よろしくお願いします。母をたのみます」とお辞儀をした。


小菅が帰ると凜香は直ぐに伸子に電話をして、母の事件を伝えた。

伸子は話を聞いて驚く、刑事がスナックビルに来ていたのは知っていたが、香里さんが犯人にされていたと聞いて驚くが、確かにその日香里さんが店に張り紙を貼りに行ったのは間違いが無い。

その時何が有ったのか?伸子にも判らないが、釜江さんと付き合っていた事実は無いと思っていた。


毎日の様に高校に行く勝弘、美千代は自宅で猛が自分の物を整理しているのを毎日眺めていた。

懐かしい写真、懐かしい服、六十六年の歴史が一つ一つ蘇って感慨深い美千代。

店も伸子が引き続き営業してくれるから、後は生まれ変わるのが誰のお腹なのか?お父さんは?お母さんは?の心配が今の楽しみだ。

勉強を頑張って良い学校に行く、学歴社会だから頑張ろう、美男子には目を向けない、真面目に働く男と結婚すると決意する。

これから何年生きるのだろう?また六十年生きられるの?今度は海外に旅行に行きたいわね、仕事に追われて一度も海外には行ってないから、水泳は好きだから早い時期に始めて選手に成るか?

飲み屋は絶対にやらない、もう酔っ払いは要らないわ。と色々と夢を膨らませていた時。

「貴方、大変よ!店の戸崎香里さんが逮捕されたって、伸子さんが連絡してきたわ」

「えー」(えー)猛と美千代が同時に驚きの声をあげた。

「貴方、声がお母さんに似てきたわ」と純江が驚きの顔をする。

「逮捕理由は?」

「殺人だって」

「えーー殺人?」

「そう」

「誰を殺した?」

「知らない人だって」

「知らない人殺すか?」と驚きの猛、既に美千代は警察に飛んで香里の側に居た。

(おーい釜江さん!)と叫ぶ美千代だった。


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