第10話亡霊の反撃
24-010
消えてしまった勝弘は、香里のアパートに来ていた。
凜香の若々しい身体を見たので、もう一度眺めたいと思ってやって来たのだが、凜香の姿はアパートに無い。
名前を覚えていない勝弘は凜香の処に飛ぶ事が出来ないので、待つ事にして近所を浮遊していた。
美千代は自分の骨を見てショックを感じて、やはり見るべきでは無かったと後悔をして、これから何処に行こうか?
新しい母は誰だろう?そうだ!店は誰がするのだろう?と自分の店にやって来た。
張り紙が破れて、風に揺れて僅か数日前の出来事なのに、時間を痛切に感じていた。
店は誰かがしてくれるのだろうか?長年続いたスナック(夢)が無くなるのは寂しい気持ちにも成った。
もう陽が西に傾き、伸子の処に行って状況を確かめ様とする美千代。
その伸子は葬儀の後、香里を除く三人で店の事を話会っていた。
長い話し合いの中で、四人で引き続き営業していく事に成ったので、ビルの所有者と明日伸子が代表で会う事に成った。
「香里にも連絡をして了解を貰いましょう、週三日は出て貰わないと廻らないから」と伸子が話して電話をするが中々電話に出ない。
「香里、警察に行くと言っていたわよね」
「そう、前勤めていた会社の人が事件に巻き込まれて聞かれているとか?」と話している時に美千代が飛んで来た。
「変ね、電話出ないわ」香里は携帯を切っていたから繋がらない。
「四人でも足りないから、今までよりも沢山出勤して貰わないと、交代で早出もして掃除も有るからね」と伸子が話しながらもう一度電話をするが繋がらない。
「警察で何か有ったのかな?」と愛の言葉に美千代が(えー、警察に)と叫ぶと直ぐに香里の場所に飛ぶ。
結局三人は誰か人を誘う事にして、五人体制で店を継続する事で別れた。
香里が警察の追求のピンチで、今にも逮捕されそうな雰囲気に成っていたのを知る筈もない。
美千代が警察の香里の処に行くと「もう自供して、楽に成れ」と泊刑事に説得されている。
瞳は真っ赤に充血して、泣いていた事が美千代には直ぐに判った。
机の上の写真を見て、驚く美千代(これは、ラブホの写真?釜江さんと一緒に行ったの?二人が嘘を?あの馬鹿、おーい釜江!)と呼ぶ。
(おい、良い処だったのに、高校生が生着替えの時に呼ぶなよ)と勝弘が側に来る。
(これ、見てみなさいよ、二人は私を騙したの?)机の写真を見る勝弘が(何故?この子とラブホに行っているのだ?)
(知らないわよ、香里が貴方を殺した犯人にされているのよ、何とかしなさいよ)
(俺、身に覚えが無いのに、そう言われても)と困る勝弘。
「どうしても、自白しないなら、今夜はお泊まり頂きますがね」と須賀刑事が言うと、香里が顔をあげて「認めたら帰れるのですか?」
「馬鹿じゃないの、即刻逮捕ですよ」と言う須賀刑事。
「認めるのですか?」
「家に帰らないと、子供が心配します、もう帰る頃ですから」
「子供の心配より自分の心配をしたらどうだ!」
「でも、私が何故?あの人を殺す必要が有るのでしょう?」と香里も泣きながら冷静に考えていた。
「お金を貸していたでしょう?」と言う須賀刑事に「ははは」と急に笑い出す。
「狂ったのか?」
「冗談でしょう、人に貸すお金なんて有りませんよ、調べれば判るでしょう、子供の教育費と生活で一杯よ、あの住まいを見ても判りませんか?」
(そうよ、そうだわ!香里負けるな)と応援する美千代。
(俺、何も用事無いから、行くぜ、高校生)と言って消える勝弘。
(駄目、戻って見守るのよ、帰れ)と叫ぶと(男友達来ていたのに、何か有るかも)と言う勝弘。
(えー、何の話なの?)
(この女の子供の家に、高校生の男が来いたのだよ)
(えー、母親が留守の時に家に?大変だわ、間違いが有ると)今度は美千代が消える。
(あちゃー)と美千代が驚く光景が目の前に有った。
凜香と高校生が抱き合ってキスをしている現場に遭遇して(駄目だ、これ以上は駄目よ、どうしょう、おーい釜江)と呼ぶ。
(おい、今度はここに呼ぶのか、おおーキスしている、中々二枚目の男だな)
(加東って書いているわ、でも駄目高校生がこれ以上したら駄目)と言い出す美千代。
(電気を消せよ)と言う勝弘(そうよ、電気を消して、違うそうでは。。。)と言いかけると本当に暗闇に成った。
「どうしたの?」
「停電」とキスをしていた二人が急に離れて外を見る。
「他の部屋灯っているよ」
(あれ?何故消えたの?)
(電気を灯せよ、見えない)
(そうよ、灯して)と言うと今度は明かりが灯る。
「灯った」
「どうして?古いアパートだから?」
(もしかして、二人で同じ事願うと、出来るのかな?)
(本当か?)
(じゃあ、もう一度試しに、電気を消して!)
(電気を消せ)
「いゃー、又消えたわ」
「ボロアパートだから?」
(本当だわ、同じ事言えば反応するわよ、今度は灯してみましょう)と面白く成って、何度も消したり灯したりを繰り返す二人。
「俺、今夜は帰る、気持ち悪いよ、折角だけれどまた次回ね」と加東は顔色を変えて、部屋を出て行った。
(帰った、幽霊の私達でも、追い返せた)
(俺は見たかったな)
(馬鹿、お母さんが警察に逮捕されるかも知れないのに駄目よ)凜香は蛍光灯を見上げて怪訝な顔に成っていた。
(二人で協力すれば、他にも出来る事が有るわよ、行きましょう)
(何処へ)
(警察よ)と再び取り調べ室に戻るが香里の姿は無い。
(あれ?消えた、何処に行ったの?)
(死刑に成ったのか?)
(貴方本当に馬鹿よね、何故貴方を突き落としたとしても、死刑には成らないよ)
隣の部屋で泊刑事が「お金の流れをもう少し調べよう」
「上手に逃げられましたね」
「でも確かに、お金の余裕は無いと思う、あの酔っ払いにお金を貸す様な女性では無い様に思うよ」
「まあ、確かにあの死んだ釜江は駄目な男でしたね」
(俺の事だよ、この刑事野郎)と須賀の頭を叩く勝弘。
「明日から、お金の裏付けと森永と云うスナック(梓)の従業員の話も聞いてみよう」
「でもあの、酔っ払いの馬鹿な男の為に、殺人犯に成るのは辛いでしょうね」
(誰が馬鹿だ!)今度は連発で頭を叩く勝弘(香里を虐めるから、私も一発叩いてやろう)
「あっ、痛い」と声を出す須賀刑事。
「どうした?」と泊が尋ねると「急に頭の天辺が痛かったのです」
「大丈夫か?頭の線が切れかけているかも?」
「冗談は止めて下さいよ、僕はまだ若いし独身ですよ」
(わー、また反応有ったわ、もう一度叩いてやれ)と美千代が叩くと勝弘が勢いよく叩く。
「痛い」と頭を押さえる須賀刑事は「本当に、切れかかっているのかな」と考え出していた。
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