第9話窮地
24-09
(叔母さん!何しているの?)
(ああ、釜江さんか貴方も来たのね、焼けるのを待っているのよ)
(自分の骨を見る為?)
(そうよ、興味有るわ)
(俺、興味無いから、可愛い女の子の裸でも見に行くわ)
(幽霊に成っても同じだね)
(四十九日間だけだろう?自由に飛べるのは?その後は誰かの腹の中だろう?)
(そうよね、そうなると貴方とも会えないわね)
(今のうちだよ、行って来ます)
(あっ、行っちゃった)自分の棺が焼かれる前に何処かに消えた勝弘。
警察署に行った香里を、取り調べ室に案内する須賀刑事に「ここって、取り調べの部屋?テレビで見る感じだわ、何故?私が?」と聞いていると泊刑事がやって来て「ご苦労さん、戸崎さん、もう隠しても駄目ですよ、証拠も出ているからね!」
「はあ?何を隠すのですか?」
「殺人ですよ」と横から須賀が言う。
「誰が亡くなって?足立さん?」
「それ、誰?他にも犯罪が有るのですか?」と須賀が驚いて聞く。
「貴女が釜江勝弘さんをスナックで、突き落とした件ですよ」と泊刑事が言う。「知りません、あの方が勝手に落ちたのです」
「じゃあ、何故警察に届けなかったのですか?血を流して倒れている人を見て、救急車も呼んでないですよね」
「それは。。。。。」と言葉に詰まる香里。
確か隣の(梓)ってスナックに逃げ込んで、警察官が調べに来たけれど知らないとママが話してくれて、香里も知らないで帰った記憶が蘇っていた。
誰かが見ていたの?私何もしていないのに?足立さんとシルクシャトウに行ったから、その足立さんが事件に巻き込まれたか、亡くなって何か聞かれるのかと思って来たのに、あの転落事故の犯人にされているの?と頭の中を色々な事が駆け巡った。
「何を考えているのだ、目撃者も裏もとれている、正直に話して罪を償え」と須賀が詰め寄る。
「知りません、あの人が自分で落ちたのです、警察も救急車も浮かびませんでした、恐くて」
「逃げたのだろう?」
「。。。。。」
「戸崎さんは釜江さんを以前から知っていて、あの日もお金の事で口論に成って突き飛ばした、そうだろう」
「違います、知らない人です」
「嘘を言うな、二人はホテルに行く関係じゃないか、酒ばかり飲んでいる釜江にお金を貸していたのだろう?」意味不明の話に驚く香里。
「これは?誰だ?」と机にラブホテルの監視カメラの映像のプリントを並べる。
「二人が仲良く、行っているでしょう?」
「何度行ったの?」と好奇心の目で尋ねる須賀刑事。
写真を見て「これは!」と驚く香里、確かにそこには自分の後に釜江の姿が映っている。
「観念して、正直に話して楽に成れば?今日葬式だったでしょう?」
「私は本当にこの人知りません、あの日に店の近くで会っただけです」
「じゃあ、この写真は?これはシルクシャトウと云うラブホテルの駐車場から、ホテルに上がる処に設置されているのだよ」と須賀が言うと「戸崎さん、このラブホに行きましたよね」と泊刑事が尋ねると、渋々頷く香里。
「でも、この釜江さんとは行っていません」
「じゃあ、誰と行ったのですか?」
「。。。。。」
「答えないと、確定に成りますよ」
「。。。。。。」中々言葉に出せない香里。
しばらくして「足立さんと一度行きました、もう一年以上前です」
「何処の足立さん?」
「ひまわり薬局の事務長さんの足立幸介さんです」
「ひまわり薬局はチェーンの調剤薬局だな」と泊刑事が言う。
「一年程前まで、そこの事務の仕事をしていました、それで足立さんと交際をして、誘われて行きました、その時の画像です、服装を覚えていますから間違い無いです」とぼそぼそと答える香里。
「その足立さんは何処にも映っていませんがね」
「須賀君、直ぐにひまわり薬局に電話をして、足立と云う男が居るか確かめて来い」
「はい」と須賀が取り調べ室を出て行った。
香里は何故?この様な事に成ってしまったのか?とあの時の情景を思い出していた。
自分が隣の(梓)に入る前に誰かに見られていたのだろう?あのママは親切に警察にも証言してくれた。
「幾ら程貸していたの?」と泊刑事がたずねる。
「誰に?でしょう?」
「突き飛ばした釜江さんに、住んでいる住居から考えると、貸したお金が戻って来ないと焦るよね」
「関係無いです、知りません、あの夜会っただけです」と興奮気味に否定する。
「泊さん、足立はひまわり薬局を最近退職していますね」
「それで住所とか連絡先は判ったのか?」
「はい、携帯を持っていたので、かけましたが繋がりませんでした」
「そうか、何度もかけてくれ」
「はい、白鳥に頼んで置きました」
「このままですとお泊まり頂く事に成りますが?」
「えーそんな、自宅には高校生の娘が一人で夕方には帰ります、無実の罪の人を警察は捕まるのですか?」と気丈に答えるが不安が高く成る。
その時白鳥が駆け込んできて、泊刑事に耳うちした。
「今、足立さんと連絡がとれたよ」
「そうですか、良かった」と安堵の顔をする香里。
「戸崎さんとその様な関係にも成ってないし、ましてホテルに何か行くはずがないとの返事です」と泊が説明した。
「そんな、足立さんが嘘を。。。。」
「もう観念しなさいよ、突き飛ばしたのでしょう」と須賀刑事が詰め寄る。
「違いますーーーー」と大声を出すと机に泣き崩れる香里。
「もう少しだ、認めるのは時間の問題だ」
「はい、自白させます」須賀と泊が耳うちして話している。
すると香里が起き上がって「(梓)のママさんに聞いて下さい、お願いします」と泊の背広の裾を持って懇願すると「戸崎さん、そのママは貴女が血相を変えて、呆然と立って居た何かとんでもない事態だと思ったと証言しているのですよ」
「えー、そんな事」香里は窮地に立たされたと項垂れて無口に成ってしまった。
その足立は香里以外にも薬局の女性に声をかけて、ホテルに行く事を数人繰り返していた。
その中の一人が会社に自分の恥も顧みずに訴えたので、発覚して今円満退社か?それとも他にも被害者が沢山居るのか?と調査の最中に成っていた。
中々名乗り出る女性が居なくて、足立はこの訴えた小杉彩乃一人を騙した事に成りつつ有った。
その最中の警察からの問い合わせに驚いた足立は、認める筈もなかったのだ。
何も喋らなく成った香里、警察との根比べ状態に成っていた。
香里は誰か証人に成ってくれる人は居ないのかと考えるが、唯一の隣のママが反対の証言をしたのなら、どうする事も出来ないと気が狂いそうに成っていた。
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