第6話聞き込み

24-06

美千代は自分の通夜もそこそこに、スナックビルに飛んで刑事の捜査の様子を見に来た。

泊達は開いているスナックの扉を開くが、この時間殆ど閉まっていて「ここは、例の店ですね」

「従業員の娘の話だけだったから、ママにも聞いてみよう」と扉を開くと「まだですよ」と美雪が二人を見て微笑むが、刑事だと判ると「何だ、刑事さんか」と落胆の表情に成った。

「先日教えて貰った森永さんの自宅で、娘さんの話を聞きましたが、ママさんの話も聞きたいと思いまして、伺いました」

「そう、千登勢の娘に話したのね、何て聞いて来たの?」

泊刑事が「それが、香里さんが突き飛ばし。。。。」と言いかけた須賀刑事の腕を、突いた。

「いえ、証言が確かなのかをママにも聞こうと思いまして」泊刑事が目で須賀に怒る。

美雪は「そうなの、娘さんがその様に話したのなら、隠無いわね!」

「では突き飛ばしたのですか?男女の関係も。。。」と言い始めた須賀を睨む泊刑事。

「そうなのよ、二人はそんな関係よ、ラブホから出て来るのを見たのよ」と美雪は輪をかけて面白可笑しく語る。

「歳より若く、見えるでしょう?幾つだったかな?」と上手に聞き出す美雪。

「四十代半ばです」とまたしても須賀刑事が答えると「でしょう?四十前後に見えるから得よね」

「そのラブホは何処でした?」と尋ねた時に美千代が刑事を捜し当てて、横に来た。

「何処だったかな?」と考えながら「そうだ、シルクシャトウだわ!そう見た、見た!」と叫ぶ美雪。

(えっ、私が赤松さんと行ったホテルじゃあ?)何故?あのママが私の事知っているのよ、と話の途中から聞いた美千代は驚きの顔に成っていた。

まだ、慣れていないので美千代は瞬間で移動する事が出来ないので、通夜の会場からここに来るのに手間取ったのだ。

話の途中を聞いて自分の話を何故?と思っていたら、香里の事だとようやく理解が出来たが、香里が何故?シルクシャトウなのか?不思議に聞いていると「そのホテルで見たのはいつですか?釜江さんと一緒に出て来たのですか?入ったのですか?」と尋ねる泊刑事。

(えっ!あの男と香里が?)聞いてみよう(おーい、釜江さん)と呼ぶと(何用事だ?面白い物見つけたか?)と一瞬で表れた。

(早いわね)

(呼ばれて、返事をしたらここに来たよ、俺の死亡現場だな)

(釜江さん、うちの店の香里とホテルに行ったの?)

(それ、誰よ、名前では判らない)

(じゃあ、見に行こう)と言うと美千代が(香里に会いに!)と叫ぶと、一瞬で飛んだ。

(わー、驚いた、通夜から帰るのだわ)呼ぼう(釜江さん)と呼ぶと一瞬で勝弘がやって来る。

(あの子よ)

(ああ、俺が落ちた時に肩を触ろうとした女だ)

(あの子とラブホに行ったの?)

(えー、幽霊でも行けるのか?)

(馬鹿な事言わないで、あの子と生きている時に行ったの?)

(生きている時にあの子とその様な事が有れば、飲みつぶれてないよ)

(そうよね、じゃああの(梓)のママは嘘を刑事に言ったの?香里が殺人犯?大変だ)美千代は慌ててスナックビルに戻る。

千登勢、口から出任せ喋ったのね、私が大袈裟に話したから?今更違うとは言えないし、ラブホの話も上手に作れたわ、急に聞かれて最近行ったから口から出てしまったと、美雪は刑事を見送ってから困惑していた。

スナックに戻ると刑事は既に何処かに行ってしまって、自分の店を見ると張り紙が当分休みますと書いて有る。

誰も店をしないのかな?伸子にそのまま営業すればと勧めたけれど?としみじみと自分の店を懐かしそうに見つめる美千代。

その時数人の客がやって来て「当分休みだって」と一人が張り紙を見て言う。

「ここに入るか?」と隣の(梓)を指さす(そこは、辞めた方が嘘つき女だよ、役所の安藤さん)と後ろから声をかけて肩を叩く。

「どうした?」と振り返る安藤と呼ばれた男「何?」と後ろに居た小金井が怪訝な顔で見る。

「肩を叩いた?」

「知らない」と不思議な顔で見ている。

(叩けるのかな?)と言うと今度は小金井の肩を叩くと、右手で肩を払う様に触るから、美千代が今度は頭を叩いて見ると、同じく頭に手を持っていって、払う仕草を見せる。

四人の男を交互に頭を叩いて遊ぶ美千代に「他に行こう、気乗りしない」と安藤はエレベーターに向かって歩き出して(良かったわ、ここには行かない方が良いわ)と美千代は安心した様に(刑事の処!)と叫ぶが移動しない。

(画老さん~)と叫ぶ美千代(どうしたの?)と声が聞こえる。

(移動しないのよ)

(名前を呼ばないと移動しないよ、例えば安田刑事とかだよ)

(えー、名前知らないわ)と言っても画老童子は返事をしない。

忙しく仕事をしているから、相手にしていない。

今日は天使様の監査の日に成っていて、美千代の存在は知られたく無かったのだ。


安芸津童子も勝弘が見つかると困るから、呼ばれる事に困り顔、両親が通夜に来て、泣き出してもらい泣きの勝弘で、八十歳の父と七十八歳の母の涙に肩を落とすと(安芸津童子、蘇るなら同じ両親にしてくれ~~)と叫んでいた。

(大声で叫ぶなよ、七十八のお婆さんが妊娠するわけない)と耳元で囁く安芸津童子だ。

もう二人の蘇る場所は二人の神様は決めていたが二人には伝えない。

先に伝えると、色々細工をされるから困るからだ。


二人の刑事は戸崎香里の自宅に向かっていた。

「この辺りですよ、もう帰っていますかね」と須賀刑事が言うと「グランドパレスって、何処だ?」

「大きなマンションでしょうね」

「薄暗くて、看板が見えないな」と歩きながら探す二人

「この辺りに大きくて綺麗なマンションは見当たりませんよ」

「そうだな、小さなアパート位しかないな」

「他は個人の住宅ですね、住所間違えた?嘘を話した?」

「ここのお宅で尋ねてみよう」と一軒の住宅に入る。

すると初老の女性が、すぐそこのアパートよと教えてくれた。

「あそこのアパートに住んでいる戸崎さんってご存じですか?」と尋ねる泊刑事に「よく知っているわよ、顔を会わせると挨拶してくれるし、子供さんも良い子よ、高校生の女の子と二人暮らし、もう十年前位に離婚して二人で暮らして居るわ」

須賀刑事が「五十代の男性が尋ねて来る事は有りますか?」と尋ねるとしばらく考えて「最近、時々見るわ、何か有ったのですか?」

「その男性を見て何か感じましたか?」

「私の家の前で話をしていたのを聞いた事が一度有るのですが、二人は男女の仲が有ったと思いましたよ」と答えた。

勝弘がここに来ているのかと考える二人。



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