第2話 可奈子
満たされた気持ちでいなければ、不安になってしまう。
学生時代からそうだった。
常に話題の中心でいたかったし、異性からチヤホヤされたかった。
高校を卒業して地元で自営業を営む家に嫁いだ。
早すぎる結婚と言われたけれど、地元では、それなりの名前の知られている土建業社。
この結婚で、私は、社長夫人という肩書きを手に入れたのだ。
3年前、念願の二世帯住宅の新居も完成した。1年間、建築家と構想を何度も重ねて実現した正に夢のマイホーム。
近所でもひときわ目を惹く、スタイリッシュな真っ黒な外観。
反対に内装は白一色。
こだわりぬいた内装デザインだけに、玄関から斬新で開放感溢れる空間となっている。
何度か建築系の雑誌にも掲載された。
郊外ではあるけれど、一般的に見たら私は間違いなく『勝ち組』に映っているに違いない。
だけど、なんだか毎日味気ない。
子供達は、手がかからない年齢となった。
好きな事も自由にできるはず。
未だに夫は、週に何度も求めてくる。
幸せで満たされているはずなのに、何かが足りない。
理由はわかっている。
もっともっと色んな男性と恋をしたい。
刺激が欲しい。
恋をしたら、もっと綺麗になれるはず。
綺麗になったら、旦那は喜んでくれるはず。
私もストレスを感じずに、家族に優しくできるはず。
恋する理由は、いくつもいくつも出てくる。
不思議と罪悪感も感じない。
だって、自分が輝いている事で、家事も頑張れるんだから。
私の人生一度きり。
好きな事を選択して何が悪い?
そう思った私は、出会い系サイトに登録した。
登録内容の入力から、既に胸は高鳴っていた。
どんな人から連絡が来るのかしら?
すでに恋の予感に酔い始めている自分がいた。
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