女の戦力外通告
はるかぜサクラ
第1話 凛子
人生は平坦ではない。
そんなことは解っている。
年齢を重ねる毎に、すでに色々な山に登り、そして降りてきた。
20代早々に、10歳年上の会社の上司と結婚し、3年後には離婚。
若い無知な私にとって、彼は仕事も財力もある魅力的な男性だった。
でも、それしかなかった。
うわべだけの彼に憧れ、浮かれていた。
彼もそうだ。
若い奥さんは、彼にとってはお飾りでしかなかった。
ほとんど自宅には帰ってこない。
たまに帰宅しては、仕事のストレスか何かわからないが、イライラしている。
彼の細かなルーティンを乱すような事があれば、直接私には暴力を振るうことはしないものの、家具や食器を壊し、私との会話はゼロとなる。
そんな日々を送っているうちに、私の心身が悲鳴を上げた。
仕事を終え、自宅に戻る帰路で、決まって涙が自然と溢れて止まらなくなる。
家に帰りたくない気持ちなのか、居場所がないという孤独感なのか、自分でもよくわからない。
ただただ、涙が出て悲しさが後から後から押し寄せてくる。
暗い部屋に灯りをつける頃には、嗚咽がでるほど泣いていた。
今日も一人。
更なる孤独感がドッと押し寄せてくる。
今となっては、そんな事もあった、と言う事実さえ忘れかけそうだが、きっとそれは、自動的に嫌な思い出を消去しようと言う気持ちが作用しているのかもしれない。
苗字はもちろん覚えているが、彼の名前の漢字は覚えていない。
そういえば、彼の母親も、当時私の名前を覚えていたのかな?
「凛子です」と電話をしても、「凛子さん?どちらの……」という具合だった。
当時の私は、浅はかで、おままごとみたいに結婚生活を考えていたのかもしれない。
悩んで悩んで、苦しんで、最終的に、彼から逃げるように引っ越した。
そんな記憶に残らない(消去した)20代を過ごし、
40代を迎え、年に数回会う遠方の両親の老いを感じ、その姿を見て、自身の老いも感じる。
まだまだ元気だと思っていてもふとした事で、身体が悲鳴を上げる。身体だけでは
ない。心も落ち込み悩むから厄介だ。
夜もなかなか眠れない。
鏡を見れば、しみ、白髪、たるみに、ため息。
服を脱げば、だらしなくたるんだ身体。
誰が、こんな身体を抱きたいと思う?
自問自答して見るが、やっぱりため息しか出てこない。
もう何年、セックスしていないだろう?
このまま、満たされることのないまま人生終わるのだろうか?
もう40歳も後半。
結局、ため息しか出てこない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます