明日、光を捨てたら

@hikari_himawari

八月 I won't last a day without you.

東京の端っこの田舎町で太陽が一軒の平屋を照らしていた。その平屋は小さな山奥にあり、覆い茂った竹やぶに囲まれている。一見すると、誰もここに家があるとは思わないだろう。そんな人里離れた"木々山荘"で物語りは始まる。


"木々山荘"とは物語りの主人公、向日葵が命名したこの小さな家の名前だ。木々山荘には人間が二人と痩せっぽちの雄猫と高齢のハムスターが暮らしている。音楽家の「葉山 向日葵」、年下の恋人「木々山 光」、猫の「くらげ」、ハムスターの「真冬」。というわけで光の名字が木々山なのと、近所に木々山公園というなんとも奇遇な公園が存在するので有無を言わさず向日葵が"木々山荘"と名付けたのだった。


光は朝にめっきり弱くて、スマホのアラームを8時に鳴らすくせにその音を合図にいつも掛け布団に潜り込んでしまう。その光景を何杯目かのコーヒーを淹れながら見るのが向日葵の日課だった。

向日葵は起きるのが早い。だいたいは朝陽が昇る前に目を覚まし、その日のタスクをスケジュール帳の余白にびっしり書き込む。それからお気に入りのヘッドホンで音楽を聞きながら砂糖たっぷりの甘いコーヒーを飲むのが好きだった。

ちなみに、猫のくらげも朝は瞼が開かないらしくピアノの上で眠りこけていることが多い。木々山荘の一日は昼近くから動き出す。

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