3.それは突然の雨のように

 そんなこんなで、あっという間に高校を卒業し大学を出て、私は社会人になっていた。

 新卒で入社してもう三年ほど。当たり前の話だけど、とっくの昔に新人扱いは終わっていて、お給料が上がらない割には、責任のある仕事を任されるようになっていた。

 けれども――。


「暇ねぇ……」

「暇、だなぁ……」


 同僚の織田と一緒にため息をつく。

 今日は二人して、業界団体の主催する毎年恒例の大規模展示イベントへとやって来ていた。うちの会社の展示ブースを、織田と二人で任されてやる気になっていたんだけれども……会場は混雑しているのに、うちのブースは閑古鳥が鳴いていた。

 お客さんはゼロではないけれども、とにかく殆どの時間は暇で暇で仕方がない。


 そもそも、うちの会社自体が業界ではマイナーだし、ブースも会場の隅っこの壁際に、ちょこんと鎮座している程度。これでお客さんの方から勝手に来てくれるなんてことは、常識的に考えて……ない。


「斎藤、先にお昼休憩してきたら? この調子じゃ、一人ずつ交代で当番しても余裕っぽいぞ」

「う~ん。私はまだお腹すいてないから、後でいいわ」

「そか。りょーかい。敷地内でB級グルメイベントやってたはずだから、そっち見てくるわ~」

「……ほどほどにね」


 織田は見た目は細いが、それでいていつも御飯の量が多い。「痩せの大食い」とでも言えばいいだろうか? とにかくよく食べる。

 B級グルメには大盛りを売りにしたものも多いので、織田としては気になって仕方ないはずだ。


 ――織田を見送り、一人になる。

 会場内は、相変わらずの混雑。でも、うちの会社とその周囲のブースだけは閑散としている。会場の中央にあるステージでは、何やらイベントをやっているらしく、先程から派手な音楽とMCの声が響いていた。観客もかなりの数が集まっていて、会場全体の中でも人の密度が一段と濃かった。


(あっちは賑やかでいいなぁ……)


 そんな事をぼんやりと考えながら、遠くの賑わいを眺めていて――不意に心臓が止まりかけた。


「えっ……」


 自分の目にしているものが信じられなくて、我知らず声が漏れた。なんだ、あれは。

 ――なんで、姿

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