第126話 オゥーチャー

「全ての命を救うためです、貴方にはあの」

「断る」

「全ての生命体があのミミズに寄生されるかもしれないのですよ?」


「ジュディスに対する魔力の補給には代替案がある。どちらも俺が近くに居なければならない方法なら、俺は童っ……天使にならない方法を選ぶ!!」


「はあ……まあ良いでしょう。人間嫌いの貴方がやる気があるだけでも僥倖なのですから」

「そこまで言う? 確かに人間は嫌いだけど、虐殺しようとか滅びろとかは思わないよ? 害のある奴には思うけど、俺に無関係なら俺からも無関心だからな?」


 ラケルとの話し合いが終わったジュディスは、地下で広域消滅魔法の練習をしている。

 放たれた魔法を亜空間が吸収したので驚き、目覚めたゼノはラケルから事情を聞いてから反対した。

 金色あれをマスターしてしまったら、永遠に童貞を司る存在になってしまう。

 そんな予感が頭から離れなかったので、即座に代替案を考えつき提案した。


「既にジュディスへの魔力供給は4度成功している。この亜空間に一部でも体が入っているなら、全く減衰なく魔力を回復させられると判明している」


 ジュディスの放った消滅魔法の魔力を吸収して目覚めたゼノは、彼女がかなり魔力を消費して体力まで消耗している事に気付いた。

 なので直ぐさま生活魔法で吸収の逆の放出を行った、それもジュディスの体内全体に向かってだ。


 結果は重畳で、全身染み渡るように溢れてくる魔力に、ジュディスはほんの一瞬で体力までも全快した。

 溢れる魔力が肉体を活性化させ体調が整い、肉体が魔力を使い回復魔法にも似た効果を齎したのだ。


 同じ事を3度繰り返してみたがジュディスの負担がデカくね? そう考え常に魔力を完全まで満たすように生活魔法の設定を変えてみたのだが。

 以降は亜空間内部の全員が常時魔力満杯状態になった。

 ホースの中の水が後から後から押し出されるように、魔力を使用しながら回復し続けるようになったのだった。

 そうラケルに説明すると。


「別の方法でも魔力の供給ができるなら良いのですが、貴方に負担はないのですか?」


 と、聞かれた。

 常に歯に布着せない彼女だが、同時にゼノの心身の健康を思い続けているだけはある。

 真っ先に出てきた言葉が褒めるではなく心配なのだから、流石はといった所か。


「問題ない、むしろどっ、どうt……天使にならないだけ、俺への負担は軽いかな」

「そうですか、それなら良いのです」


 その日ゼノは、珍しくラケルと穏やかな時間を過ごした。

 器用さ全壊の彼女に、こう言われるまでは。


「お茶を入れる練習するので、味の感想をお願いします」

「え"っ!?」


 その晩、彼は寝込んだそうな。

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