第125話 うなされるもの

 まだ完全ではないが確かにゼノは金色のオーラを身に纏っていた。

 正気に戻ったジュディスとラケルは、金色のオーラがなんなのかをゼノに説明している。


「いいですかゼノ、心を落ち着かせて聞いてください」

「おっ、おう……」


 あの世界樹の一部だったラケルにここまで神妙な表情をさせる、その事実にゼノは少し及び腰になりつつも答える。


「金色のオーラ、それは神かそれに近しい者にしか現れない、言うなれば存在の格を示す証なのです」

「アイアムゴッド?」

「どちらかと言えば、童貞を司る天使といったところではないでしょうか」

「ゲッフゥ……」


 ラケルの放った容赦ない一言により、ゼノはオーラを霧散させて気絶した。


「それにしても予想外でしたね、ラケルさまー」

「元々頭のキレる男でしたから。不運不幸を背負っていますが、脳力だけならかなりのものです。大方暇を見つけてはアレがなんなのか、どうすれば発現するのかと探っていたのでしょう」


「生活魔法と偶然があったとはいえ、精霊を感じられないゼノさんが独力で至るなんて、思いもよりませんでしたー」

「その点については私も同意見ですが、最後のきっかけは恐らく私を取り込んだからでしょう。それまでは偶然条件が満たされた時に短時間だけだったのに対して、神の一部を自身の能力に吸収したので、神への親和性が貴方並に高まったのでしょうね」


 そう、ジュディスは邪竜の呪いがゼノに吸収された時に神性を得ている。

 世界樹を枯らす呪いを身に宿しながらも生き延びた事で、存在としての格が上がり今のゼノよりも高い位階に至っている。

 それでも地上に居るのは肉体が生きているからだけではなく、世界樹に任命されたゼノの守護者としての使命があったからだ。


 元々永きを生きるエルフの先祖返りだ、高々100年余分に地上で生きたとしても誤差でしかない。

 ゼノの死後は世界樹の守護者として余生を送り、自身の死後は世界樹の眷属神となって世界を見守るつもりであった。

 それが大いに伸びる可能性が出てきて、今後が少し楽しみになってきていた。


「しかし、ミラとフェリシアにはどう説明しますか……」

「ですね〜……」


 なんでこんな男をと思わずにはいられない男ゼノ、彼に惚れているミラと主人と決め仕えているフェリシア。

 2人がゼノと寿命差ができた場合、どのような答えを導き出すのか。

 それを聞くであろう男は血の涙を流しながらテーブルで気絶していた。


「ど、童貞……卒業、不可、永久……」


 とても辛い悪夢にうなされながら。

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