第124話 知らない間に彼はGをマスターしていました

 耐暑耐寒機能も完備した砂漠用デブスーツを着用した、ミラ、サリア、ジュディス、ダイゴローの4名が、砂漠の国ネフラスカの外の巡回魔物討伐を終えて帰ってきた。


(ん? この感じは)


「ゼノさん、ただいま戻りました」

「おかえりミラ、君のデブスーツは分解してメンテナンスを。何かに寄生されている」

『えっ!?』


「生活魔法に入ってきた瞬間に違和感を感じた、詳しく調べてみると何かの卵、それも砂粒サイズが1つだけだった。寄生生物は宿主に害と不利益しかもたらさないから、次に外に出るならサンカイオーで出国する時かスーツの強化を完了してからな」


『はい』

「ああ」


 サリアらしい返事を聞きつつその場から離れようとしたが、そのサリアから呼び止められた。


「ゼノ、ちょっと待ってくれ、その寄生の事で気付いた事がある。アタシより説明上手なジュディスに任せるけど、いいか?」

「はい〜、いいですよ〜」


「ならここは1度解散だ。毎晩お盛んズはドーガン夫婦を集めてスーツの改良について相談してくれ」

「ちょっ、ゼノおまっ!」

「ミラとジュディスは残りのメンバーを集めて小城に集合だ、解散!」


『はい』

「アタシの話しを聞けー!」

「サリアさん、僕恥ずかしくなってきたので、早く行きましょう」


 ドクン。


「ちっ、オメエに免じて見逃してやるよ」


 ダイゴローの上目遣いにやられたサリア、2人は指を絡めて手を繋ぎ歩いて行った。


「サリア、良いなあ〜。いつか私もゼノさんと」

「もし寄生生物が人間を意のままに、寄生前となんら変わらぬように操れるのだとしたら。全ての人間にとって新たな天敵が生まれた事になる。世界の危機といい全人類の天敵といい、スローライフは遠そうだな」


 エリートヘタレと有能ピンクの間には、今日も認識と温度差が激しかった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「スーツに寄生しているのはワームの1種で間違いないじゃろう」

「戦闘中の状況証拠からも間違いないですね〜、急にサソリがワームを襲うのを止めて中から小さな個体が1匹出てきましたから」


 デブスーツの改良案を持ってやって来たドーガン達を交えて、小城のリビングではゼノ、ジュディス、ラケル、ドーガンが顔を向き合わせて会議を開いていた。


「スーツの侵入対策は済んだようですし、その寄生ミミズの親玉は、砂漠に向かってジュディスに最強魔法を使わせれば滅びるでしょう」

「この辺りは緑がないので魔力の回復が追いつかないですねー……もし使うとなったらゼノさんとミラちゃんに協力してもらいますねー」


「ふむ、ならワシはスーツを戦闘に耐えられるように改良してみるわい。ゼノよ、テスターにフェリシア嬢ちゃんを借りるぞ」

「サリア達も使ってやれ、こと戦闘に関してはあのカップルは天才だ」

「そうか、ならばそうするとしようかの」


 そう言ってドーガンはリビングを辞した。


「ではゼノさんには、自由にあの金色状態になれるようになってもらいますねー」

「ん? ああ、これの事か? これなら先日ものにしたぞ?」


 言いながらゼノは全身に金色のオーラを纏い、事もなげに2人に言ってのけた。

 この状態がなんなのか知っている2人は、現実を受け入れきれずに硬直した。

 いつものほほんとしているジュディスだけでなく、常に泰然としていたラケルまで驚愕しているのだから、この事態は相当なものだろう。

 ただそれを成し得た本人だけが理解しておらずに、若干オロオロと困惑していた。


「おーい、2人共、俺なんかやっちゃったのか? おーい返事してくれよ、おーい」


 それから数分後、あまりに心配になったゼノは、2人の頭に万能薬をかけるのだった。

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