第114話 鼻血を出しても美少年なら色々大丈夫

 錬装を使った状態での戦闘力の把握はきちんと終わらせて、次はなぜか手作業でしか作れず、工業化できない万能薬作りを行えるかどうかの器用さチェックだ。

 場所を小城のキッチンへと移し、お菓子作りに挑戦する。

 植物以外の扱いは不器用なラケルを除き、女性陣全員で和気あいあいと作業している。

 サリアが意外と家事全般に強い事に驚きつつ、ゼノはリビングでラケル、ダイゴローと紅茶を飲みながら休んでいる。


「それにしてもサリアめ、楽ができるからって今日まで家事能力があるって事を隠してたな」

「貴方は思い込みが激しいですからね。サリア程の若さであれだけの戦闘力を身に着けているなら、他の技能は磨かずに、戦闘ばかりしていたとでも決めつけていたのでしょう」


 ぐうの音も出ないゼノはノーダメージな振りをしつつ、優雅に会話を繋げていく。


「すまないな、これからはもっと気を付けるよ。それはともかくダイゴロー、あのボディスーツのような技はどうなんだ? 少し使っていたようだが、感想を聞かせてくれないか。今後の戦闘指揮の参考にしたい」


「そうですね、まだ片腕だけなので、完全な解答ならジュディスさんにしてもらってください。僕が使ってみた感じだと」


 ここでダイゴローは腕を錬装で覆ってみせる。


「最低限維持するだけで能力が2倍……ハァァァッ! これで全力ですけど、10倍以上強化されていると思います。ラケルさんに至っては下で見せた時に、瞬間的に30倍くらいまで強くなっているのを感じました」


「おいおい、それを自力で考えついて習得したってのか? あのフェリシアは。どんだけ追い込まれてたんだよ、この国で」

「そう、ですね……」


 ゼノならではだが、聞くだけでフェリシアの過酷な生き様を想像でき、それを聞いた事でダイゴローも、フェリシアが錬装を習得に至った事情について考えが及んだ。


「できましたー」

「できたぜ」

「できましたよ〜」

「できました」


「ブフォッ! サリアしゃん……」


 ドサッ。


 作った菓子の乗ったトレイを持って、キッチンから出てきた女性陣4人。

 サリアはタンクトップに短パン姿にエプロンなので、正面から見ると……

 そんなサリアのエプロン姿はダイゴローには刺激が強く、猛烈な勢いで鼻血を放出し白目を剥いて気絶してしまった。


「いやダイゴロー、お前、今のどこに鼻血ブーで気絶するとこがあったんだよ!?」

『いや、ねぇ?』


 当のサリアとダイゴローを除く全員が声を揃えた。


「サリア、それより先に部屋にダイゴローを運んでやれ。ミラはドアを開けてやってくれ」

「あっ、はい」

「あー、そうさせてもらうわ……よっと」


 ダイゴローを背負いミラに続いて退室するサリア。


「菓子は取っとくから、起きるまで看病してやるといい」

「あいよ」


 去りゆくサリアに声をかけ、ダイゴローにさらなる出血を強いるゼノ。

 いつもは自分が散々な目にあっているので、たまにはその役目を譲ろうと思ったのだ。


「貴方は何気にえげつない時がありますね」

「ですねー」


 シュトロハーゲンでの戦争の未使用作戦を知る2人ならではの感想に、新参のフェリシアは首を傾げるのであった。

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