第99話 どこからどう見ても13歳前後の華奢な美少年

「戦う前に自己紹介しとこうか、俺はダイゴロー。巨人族のショタ好きな母と、小人族の父を持ち。小さな体に巨人のパワーを持つ戦士だ」


(お母さんの趣味を話す必要はあるんでしょうかねー?)


「アタシの事が知りたいなら、勝つ事だな」


 ダイゴローから離れて相対するサリアは、自信満々に、声高らかに言うが。


「サリア、頑張れー」

『サリアー、頑張ってー』

「おおぃ!? 何、一瞬でバラしてんだよ!」


 ノリのいい仲間達に、一瞬の停滞もなく、刹那の迷いもなく。

 応援の体で名前を呼ばれて、ついツッコんでしまう。


「この前、散々イケメンってからかわれたからね。相手が冗談で済ませられる範囲内のみ、チャンスを逃さずからかっていく事は、うちのチームの伝統になったんじゃない?」

「くっ」


(こいつ、童貞って言い返したら、前みたいにヤケになってエリート童貞自慢始めそうだしな。咄嗟に言い返せるネタがねぇ!)

「テメエ、そんなんだから女にモテねえんだよ!!」


 サリアの言葉はゼノの心を深く穿ち、右手で胸を押さえたまま砂漠に膝と左手をついた。


「あっちー!!」


 砂漠の熱と光を外套で防いで我慢しながら漫才していたので、ショックで忘れていた砂の熱さに火傷しかけた。


 ミラに左手の魔法で治療をされているゼノを見て、ひとつの勝負に勝利したサリア。

 ダイゴローに視線を向けると、おもむろに外套を投げ捨てた。

 熱と日差しでやられる前に決着をつける、短期決着の意志をダイゴローに見せた。


「さあ、来い、ダイゴロー!お前のおとこを見せてみやがれ!!」

「ふん、行くぜ! 必ず勝って、俺が貧弱なショタじゃないって教えてやるぜー! オラッー!!」


 次の瞬間。

 2人の立っていた場所から砂の柱が出来上がると、周囲からドンドンと重低音が鳴り響いてきた。

 両者共に身体能力が上がりすぎており、まだ常人に近いゼノやミラには目ですら追えなかった。


「あのさ。暑いし、帰ろっか」

「そうですね」

「あっ、私は見届け人してますねー。魔法で日差しも熱さも無効化出来ますからー」

「あいよー」

「ジュディスさん、お先に失礼します」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕方になると、ジュディスも見届け人を止めて亜空間に戻ってきた。


「おかえりー」

「ジュディスさん、おかえりなさい」

「ただいまですー」

「決着ついたのか?」

「ダメですねー。2人共ハイになっちゃってますから、2日か3日はあのまま戦い続けていると思いますよー?」

「そんなにですか」


 小城でラケルに調理を教えていたゼノとミラ。

 キッチンに入ってきたジュディスを迎え入れながら、人外戦力の状況を聞いていく。

 結局その日は、料理が完成しても全員の入浴が終わっても、亜空間に入ってくる人物は居なかった。


 外の状況を知る事が出来るゼノだけは、ミラとジュディスが寝たあとも眠れなかった。

 入口の直ぐ近くで、あまりにも強い力がぶつかり合っているので、夜通し亜空間が脳内で警報を鳴らし続けていたからだ。


「夜くらい戦闘やめろよ! 寝させろよ!」

「はーい」

「ぐー……」


 一軒家から放たれたジュディスの魔法で、朝まで熟睡出来たようだ。

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