第56話 初日 3
エルフの国を襲った邪竜単体に95パーセントの傷を負わせた。
つまり邪竜を9割半殺しにしたエルドワーフに先祖返りした女性、ジュディスが仲間に入る事になった。
エルドワーフはエルフとドワーフの共通の祖先で、両方の種族のいいとこ取りをしたハイスペック種族だった様だ。
何故2つの種族に分化したのか、エルフの歴史にも存在しないが。
そんな強者が仲間に、それも自分専属の騎士になると聞いて。
ゼノは喜び半分、戸惑い半分。
喜びは。見るだけとは言え絶世の美女が、これからは近くに居る様になった事。
戸惑いは。女性と付き合うどころか、親しくした事もないので。相手が美女過ぎて、どう接して良いか判断不可能だからだ。
1度不機嫌が去り。妄想からも解き放たれ、正気に戻ったら。
外面は取り繕っても、平静ではいられなかった。
(見た目超クールビューティなのに、性格温厚で天然ゆるふわ。笑顔が素敵な二十歳過ぎくらいの美女。種族はエルドワーフとヒトだけど。同じ人間として格が違い過ぎて、むしろ俺が下で働かされる能力差じゃね?邪竜殺しを従えるなんて無理!!そのうち俺の真の能力を見破られて、国に帰らせて頂きますとか言われるんだー!!)
かなり錯乱してきた様だ。
心を落ち着ける為に、7色草の乾燥粉末を聖水に溶かして万能薬にして飲む。
レシピはジュディスから提供された。
それにまた亜空間が広がったが気にしない。
生活に必要な広さと訓練に使っている範囲以外は、どれだけ広くても変わらないからだ。
ついでにミラとジュディスの2人にも、コップに万能薬を入れて出した。
お茶の代わりになるのだろうか?
「んん?ジュディス。君にはまだ、邪竜の呪いが残ってたのか。万能薬を飲んだら何か嫌な感じがしたが?不要と言うのなら、消してもいいか?」
「何か飲んだ事のあるお茶だと思ったら、万能薬だったんですか!?そんな高価な物をホイホイ飲ませないで下さい!あと邪竜の呪いはまだ残ってますけど、国1番の魔法師でも消せなかったので期待させる様な事を言わ……ないっ!?邪竜の呪いが消えてる!?」
ガラスが砕ける様な音と共に、ゼノの体から虹色の光の欠片が飛び散っていく。
神への誓いを尊守し成し得た時に起こる現象だ。
「話しが長いから、勝手に消させてもらったぞ。神への誓いも終えた事だし、ようや」
「ありがとうございますー!!」
言葉の途中でジュディスの感謝が極まり、テーブルを飛び越えてゼノに抱き着きに行った。
しかしここでゼノとミラのマイナス特性が働き、思いもよらぬ結果へと繋がった。
ゼノはジュディスが飛びかかる直前に、予知にも近い危険予測が反応。
抱き着かれてセクハラと思われ言われる結果を回避すべく。
美女に抱き着かれるなんて無理と、ヘタレ童貞っぷりの両方を発揮して。
テーブルの下に潜る様に、体を横から下へと曲げて回避行動に移った。
ミラは持ち前の騒動巻き込まれ体質が災い。
これ以上2人の話しを聞くべきではないと、席を立ちゼノの背後を通ろうとして巻き込まれた。
結果。
ミラだけがジュディスに抱き着かれ押し倒され、胸元に抱えられたまま泣かれ続けたのだった。
ジュディスは感極まり泣き続けているので。目を開けておらず、誰を抱き締めているのか理解していない。
その光景を見るべきではないと、音が聞こえ難い風呂へと入る事にした。
決してハグで肋骨が折れる予想に怯え、かいた冷や汗を流す為ではないだろう。
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